生徒会長の底なしの執着 ~3センチの隙間から始まる予感~

数日後。

父から「再婚相手とその息子を紹介する」と告げられた時、僕は心底どうでもよかった。


兄律の母親が他界して、すぐに僕の母と再婚した父。

そして、母も随分と前に家を出て行った。
息子である僕を置いて――。


今さら父に、この家に、僕は何の期待もしていない。


新しい家族?
滑稽だ。この家は、とっくに壊れている。


――けれど。


リビングへ現れた金髪の少年を見た瞬間、僕は息を呑んだ。


――あの目だ。


春休みの生徒会室。
扉の隙間から僕を見ていた少年。


「やぁ、こんにちは」


律が柔らかな笑みを浮かべる。


「かわいい弟ができてうれしいよ」


そう言って、零へ手を差し出した。


――触るな。


律の指先が零へ触れた瞬間、猛烈な不快感に襲われた。


――それは、僕のものだ。


「どうした,、弦?」


僕の視線に、律がこちらを見る。
穏やかな声音。いつも通りの微笑み。


今思えば、律はあの時,、僕が零へ向けた異常な執着を、もう嗅ぎ取っていたんだろう。
律は僕以上に狂った異常愛の持ち主だった。


「怖い顔して、なにか気に食わないことでもあったかい?」

「……いえ」


零を巡って、酷く泥沼な争いが始まる――そんな不吉な予感。


「その髪色、新学期までには直すように」


気づけば、そんな言葉が口から出ていた。
零が眉をひそめる。


「は?」

「聖音高校の生徒として、相応しい身なりで登校してくれ」

「めんどくさ」


吐き捨てるような返答。


大手企業の創立家でもある神大寺家。その家名にも、僕の凄みにも、怯えることも媚びることなく、真っ直ぐ睨み返してくる。


「こら、零!」


母親の静止も聞かず、零は露骨に顔をしかめた。


「あんた、生徒会長だろ?」

「そうだが」

「生徒会長は生徒の代表。生徒の意見を学校に伝えることも役目のひとつ――だよな」


粗忽な服装と態度のくせに、零は優秀だった。
そうでなければ、レベルの高い聖音高校に編入なんてできるわけがなかった。


「もっと自由な校風に改善してくれよ、生徒会長さん」


その反抗的な目を、もっと歪ませたいと思った。


ぐしゃぐしゃに乱して、それでもなお、自分を見返してくる顔が見たい。


「自由を求めるなら、まずは規律を守ってから主張してくれ」

「うざ」


心底面倒だと言わんばかりに、零は嗤った。


「零、いい加減にしなさい!すみません、生意気な息子で――」


僕はどうしようもなく、零を愛おしいと思ってしまった。