入学式は親子別々で集合するため、ほのかは駅まで歩いていくことにした。
暫く歩いてようやく辿り着くと、元気な声が辺りに響き渡る。
「おっはよ、ほのか!」
「おはよう、あかねえ...
今日も元気だね...」
あかねえこと三原茜音は幼稚園からの付き合いだ。
しっかり者で姉御肌。
目鼻立ちも整った彼女には、ほのかとも同じ幼稚園の彼氏がいる。
昨日の電話での惚気を思い出し、苦笑を漏らす。
「そういえば、しづちゃんは...?」
周りを見回して、もう一人の親友の姿が見えないことに気付く。
「ああ、しづは今日歩いていくって」
「え、二駅分も...?」
思わず心のなかで首を傾げるとホームに電車が入ってくるのが見えた。
無機質なアナウンスに導かれるように、茜音とほのかはドアに向かって歩き出した。
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昇降口前に掲示されたクラスの振り分け。
ほのかは息を呑んで自分の番号と茜音の番号を探す。
『1301 彩陽ほのか』
一番に目に入ってきたのは自分の番号。
そっと視線を下にずらしていくと、茜音の番号が目に入った。
『1326 三原茜音』
「やったー、今年も一緒だね…!」
抱き合って喜んでいると、きゃー、という高い歓声が響く。
デジャヴュを感じて恐る恐る振り向くと、見慣れた姿がこちらに歩いてくる。
すらりと伸びた美脚、陽の光を浴びて輝く黒いショートヘア。
もう一人の親友―――しづちゃんこと谷 詩月の登場だ。
「おはよう、二人とも」
「おはよう…相変わらずモテモテだねえ」
「本当に、どこに行っても変わらないなあ、しづは」
周りの視線が痛い。
ご覧の通り、彼女はその中性的な美貌から男女ともにモテるのだ。
「さあ、行こうか、ほのか、茜音」
その視線を遮るように詩月が割って入る。
さりげない優しさもモテる秘訣だろうか。
「…ありがとう、しづちゃん」
「いーえ」
昔、詩月と仲が良いことでいろいろとトラブルが合ったため、
一段と気を使ってくれているのだろう。
「何してるの、ほのか!
行くよ〜?」
呼ばれた声に応えるように、ほのかはゆっくりと一歩を踏み出した。
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「えー、初めまして、担任の伊藤です、よろしくー」
間延びした担任の緩い声に、春の陽気が重なり、だんだんと眠気を誘われる。
寝ないように手の甲をつねっていると、定番の自己紹介コーナーがやってきた。
無難に済ますのが一番だ。
そう考えて立ち上がる。
「彩陽ほのかです
絵を描くことが好きです
よろしくお願いします」
ありふれたテンプレートに自分をはめ込み、ほのかは椅子に腰を下ろした。
パラパラとまばらに起こる拍手にそっとお辞儀を返す。
しばらく至って普通な自己紹介が続き、その瞬間は訪れた。
「初めまして、七澄日向です、『ひなた』って呼んでください!
好きなものはバドミントン、嫌いなものは…特にないです!
よろしくお願いしまーす!」
ああ、彼とは…住む世界が違う。
―――彼は、名前の通り日向の人間だ。
あの頃思い知った高い壁を感じ、ほのかはきゅ、と口を結んだ。
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とん、とん、とリズミカルな音が跳ねる。
屋上の扉を押し開け―――ほのかは目を見張った。
「七澄、くん…!?」
「あれ、ほのちゃんだ!
ほのちゃんも日向ぼっこ?」
「え…」
