七彩の恋を描く −澄空に、この想いを−

『好きです』

真っ直ぐに紡がれる愛の言葉に、思わず息を呑む。

ぱたん、と軽い音を立てて閉じたそれを抱きしめ、悶える。

「やっぱり『七恋』は最高だなぁ...!」

七恋――『七色の恋』は、繊細な描写と絶妙な二人の距離感が人気を博した、今話題の少女漫画だ。

斯く言うほのかも、この作品の大ファンである。

「いいな...」

そう呟いて、はっと口を閉じる。

いけない。

わたしに、そんなことを考える資格はないのだから。

あの日、私は全てを諦めた―――


大切なものを、これ以上壊さないため。

―――もう、誰も傷つけたくない。



「ほのか〜?
 入学式、遅れるよー?」

踊り場に響く母の言葉に返事をし、微かに溜め息を吐いて立ち上がる。

窓から覗いた空は、心とは反対に青く澄み渡っている。

ふと鏡に向かって笑顔を貼り付け、ほのかは入学式の準備を始めた。