「昨日の試合、冴島くんめっちゃかっこよかった~」
「最後さ、冴島くんが間宮くんにパスしたやつ! あれヤバくなかった?」
「間宮くんそれでちゃんと決めるんだもん。かっこいいよね~」
試合の翌日。
学校では、昨日の試合に応援に来ていた生徒たちの間で間宮と冴島の活躍が話題になっていた。
特に冴島は、もともとの運動能力の高さが期待されていただけに、「やっぱうちの部に欲しかった」と悔しがる声も多かった。
決勝までの数日。バスケ部はレギュラーメンバー中心の練習がメインとなった。
冴島も当たり前のようにレギュラー候補入りし、長嶋先輩や間宮たちと同じメニューをこなすことになった。
もう前みたいに一緒に居残り練習することもないし、そもそも二人で練習する必要もない。俺はそんな冴島をコートの外から眺めていた。
(ま、もう俺が教えることもないしな)
そう思うとなんだか心にぽっかり穴が空いたような気がして、昨日の試合のときより冴島が遠くに見えた。
冴島がシュートを打つたびに体育館の二階からは黄色い歓声が上がった。昨日の試合を見た生徒たちが何人か集まってるみたいだった。
(そりゃ人気でるよな)
高い身長、長い手足。冷たくも見える切長な目。
無愛想だけど、いつも真剣で。意外と熱くて──。
ふいに昨日の試合のあとに回された大きな腕の感触を思い出した。
「先輩のおかげです」
耳元で告げられた冴島の声。
見上げた先の笑顔。
胸の奥からきゅうとせり上がってくるような息苦しさを感じた瞬間に、練習試合の終了を告げるホイッスルがなってびくりと肩を揺らした。
(何考えてるんだ、俺)
そんな気持ちを振り払うようにして練習の講評をする田中先生の元に急ぐと、練習試合を終えてコートから戻ってきた間宮と目が合った。なぜか俺を見据えた間宮は、何かを見透かすような目をしていて俺は咄嗟に目を逸らした。
「羽鳥先輩」
先生の講評が終わり片付けを始めると、後ろから声をかけられた。
冴島だった。
「今日、一緒帰ってもいいですか」
「へっ?」
声をかけられて浮き足だったように体が跳ねた。
「俺このあとミーティングあるみたいなので少し遅くなるんですけど」
「あっ……いいよ。全然大丈夫。待ってるね」
平然を装って返事をしたつもりだが、思いのほか、「嬉しい」と思っている自分に何より動揺した。
冴島はほっとしたように小さく微笑むと、ミーティングに向かっていった。
先に帰り支度を終えた俺は、なんとなく部室には居づらくて、昇降口の辺りで冴島を待っていた。
スマホを眺めながら何をするでもなく待っていると、レギュラー組が体育館から出てきた。
俺の前を通って部室に戻っていく部員たちに「お疲れ様です」と声をかけながら冴島の姿がないことに気がついた。
「冴島待ってんのか?」
通りかかった長嶋先輩がなぜか苦笑するように声をかけてきた。
先輩の隣にいた間宮はなぜか面白くなさそうな顔をしている。
「あ、はい」
すると先輩は親指で体育館の方を指した。
「アイツなら今、体育館出たとこで捕まってるぞ」
「え」
そう言われて体育館のほうを見やる。
入り口の辺りで、肩くらいまでの少し茶色い髪を揺らした女子に後ろから呼び止められたみたいな姿勢で話しをしている冴島が見えた。
「あー……なるほど」
心がざわりとした。
でも、その理由がわからなかった。
「なんかお取り込み中っぽいですね。俺、先に帰ります」
できる限りの笑顔を貼り付けてなんでもないふうに言うと、俺は先輩に頭を下げて校門に向かって足早に歩いた。
遠目に見た冴島は、別にいつも通りの冴島だったように思う。
無愛想で、無表情で。首のあたりに手をやりながら、何度か相槌を打ついつもの冴島の姿。
なのに、なんで俺の胸は今こんなに苦しいんだ。
校門から出ると走るようにして帰った。そこから早く立ち去りたくてしょうがなかった。
「羽鳥!」
こんなときに後ろから呼び止められる。
「……間宮」
俺は心底めんどくさそうに後ろを振り返る。
制服にも着替えずに、そのまま荷物を持って飛び出してきたかのような間宮が見えた。
(だからなんで一番会いたくないってときに限って……)
踵を返して足早に去ろうとする俺を走って追いかけてきた間宮は、俺の肩を掴んで無理やり振り向かせた。
「なんで逃げんだよ」
「別に逃げてないよ」
はあっ、呼吸が少し上がった間宮は
「帰る約束してたんじゃねーのかよ、アイツと」
と、親指で学校のほうを指差した。
「あ、いや、帰る方向が一緒ってだけで……約束ってほどじゃないよ。なんかお取り込み中って感じだったし……」
なんでもない風に笑って見せた。
そんな俺を見て間宮はただ顔をしかめただけだった。
「……じゃあ、なんでそんな泣きそうな顔するんだよ」
──泣きそう……?
人からそう言われて初めて、今自分の胸が苦しいのは泣きそうだったからなんだと気がついた。
「え……なんで……」
「なんでって……知らねぇよ」
間宮はイラついたように地面を軽く蹴った。
でも本当に自分でもよくわからなかった。
なんで今日一日こんな心がざわつくんだろう。なんで急に苦しくなったり、泣きたくなったりするんだろう。自分がわからなくて不安になった。
「ねぇ、間宮」
俺は間宮の肩にすがるように両手を置いて項垂れた。
「なんで……なんでこんな気持ちになるのかなぁ」
頭上で盛大な舌打ちが聞こえてくる。
間宮は大きなため息をひとつ吐くと、俺の顎を掴んで無理やり顔を上に向かせた。
驚いた俺が見上げた間宮の顔は、怒ったような、泣きそうなような、変な顔をしていた。
「お前、マジでなんにも気がついてないのな」
静かな声でそう言われてどっと心臓が波打った。こちらを見る間宮の目には諦めのような切なさが宿っていた。
「俺がお前のこと好きで、ずっと昔から見てるのに、そのお前が他の誰かを見てるって思ったら──」
間宮は苦しそうに眉を寄せた。その目尻が赤く染まってく。俺は目を見開いたままそこから視線を逸らせなかった。
「泣きたくなるに決まってんだろーが」
そう言って、間宮は俺の胸の辺りを突き放すようにトン、と押した。そのまま半歩後ずさるようにして、小さく息を吐くと
「……それと同じだろ」
そう言い捨てた。
なにも答えられなかった。
間宮の気持ちも、自分の気持ちも到底受け止めきれなくて、俺はただ胸の辺りを押さえて、轟々となる自分の心臓の音だけを聞いていた。
「ほんとお前って、バスケのことならいくらでも頭回るのに、こういうことはからきしダメだな」
黙ってる俺に、間宮はいつもの軽口みたいに鼻で笑ってそう言った。
なのに、俺は少しも笑えなくて、何も返すことができなかった──だってそれくらい、その声が優しくて、泣きそうなくらい震えていたから。
「……ごめん」
俺は両手で顔を覆って、喉の奥を振り絞るようにそんな掠れ声を出した。
「間宮、ごめん……っ」
「ふざっけんな、謝んじゃねーよ!」
間宮はいつもの不機嫌そうな口調で言った。
「それじゃ俺が可哀想みたいだろ!」
「うぅ……ごめん~……」
間宮はぐしゃぐしゃと俺の頭を乱暴に掻き回した。
「俺、帰るからな」
そう言ってちらりと後ろに目を向けた。
「ほら、来たみたいだぜ」
間宮の背後、少し離れたところにジャージ姿のままの冴島が立っていた。
「泣かせたんですか?」
「あ?」
イラついたように間宮が振り返る。
冴島が据わった目をしてこちらを見ていた。
「違う! 冴島くん違くて……あと、俺泣いてないから」
「泣いてんじゃないですか」
「てめーが泣かせてんだよ!」
間宮の言葉に冴島は目を見開くと、俺の顔をじっと見つめた。
「じゃ、俺こっちだから」
間宮は俺たちを見て小さく息を吐くと、ひらひらと手を振って帰っていった。
そんな間宮の背中をしばらく見つめていると、
「間宮先輩となんかあったんですか?」
そう怪訝な顔を浮かべながら冴島が切り出した。
「え⁉︎ い……いや、なにもないよ」
両手を振りながら焦ったように答える俺を見て、冴島は何か言いたげな顔をしたけど、それ以上は追求してこなかった。
「そ、それより良かったの? 俺と帰って」
「は? 一緒に帰るって約束したじゃないですか。なんで先に帰ったんですか?」
冴島は不満を滲ませるように言った。
「え、いや……なんか話しかけられてたから……お邪魔かなぁって」
ごまかすみたいにへらりと笑うと、冴島はますます不機嫌そうに眉を寄せた。
「別に、あれは勝手に待たれてただけです」
「あ、そうなんだ。やっぱ冴島くんてモテるんだね。さすがだな~」
こんなこと言いたいんじゃないのに、芽生えそうになる感情をどうにか押し殺したくて言葉が止まらなかった。
「そりゃそうだよね。背が高くて、スポーツ万能だなんて、モテないはずないもんな」
うらやまし~、なんて白々しく笑って見せたが、冴島は少しも笑わなかった。
気まずい沈黙のまま歩き出して、いつもの公園の前まで来た。
「じゃあ、俺こっちだから」
と、信号を渡ろうとしたところで呼び止められた。
「明日も一緒に帰りたいです」
青だった信号が点滅を始める。
「レギュラーは居残り練あるだろ。俺は先に帰るよ」
俺はそう言い残して、信号が赤になる前に駆け足で横断歩道を渡った。
「最後さ、冴島くんが間宮くんにパスしたやつ! あれヤバくなかった?」
「間宮くんそれでちゃんと決めるんだもん。かっこいいよね~」
試合の翌日。
学校では、昨日の試合に応援に来ていた生徒たちの間で間宮と冴島の活躍が話題になっていた。
特に冴島は、もともとの運動能力の高さが期待されていただけに、「やっぱうちの部に欲しかった」と悔しがる声も多かった。
決勝までの数日。バスケ部はレギュラーメンバー中心の練習がメインとなった。
冴島も当たり前のようにレギュラー候補入りし、長嶋先輩や間宮たちと同じメニューをこなすことになった。
もう前みたいに一緒に居残り練習することもないし、そもそも二人で練習する必要もない。俺はそんな冴島をコートの外から眺めていた。
(ま、もう俺が教えることもないしな)
そう思うとなんだか心にぽっかり穴が空いたような気がして、昨日の試合のときより冴島が遠くに見えた。
冴島がシュートを打つたびに体育館の二階からは黄色い歓声が上がった。昨日の試合を見た生徒たちが何人か集まってるみたいだった。
(そりゃ人気でるよな)
高い身長、長い手足。冷たくも見える切長な目。
無愛想だけど、いつも真剣で。意外と熱くて──。
ふいに昨日の試合のあとに回された大きな腕の感触を思い出した。
「先輩のおかげです」
耳元で告げられた冴島の声。
見上げた先の笑顔。
胸の奥からきゅうとせり上がってくるような息苦しさを感じた瞬間に、練習試合の終了を告げるホイッスルがなってびくりと肩を揺らした。
(何考えてるんだ、俺)
そんな気持ちを振り払うようにして練習の講評をする田中先生の元に急ぐと、練習試合を終えてコートから戻ってきた間宮と目が合った。なぜか俺を見据えた間宮は、何かを見透かすような目をしていて俺は咄嗟に目を逸らした。
「羽鳥先輩」
先生の講評が終わり片付けを始めると、後ろから声をかけられた。
冴島だった。
「今日、一緒帰ってもいいですか」
「へっ?」
声をかけられて浮き足だったように体が跳ねた。
「俺このあとミーティングあるみたいなので少し遅くなるんですけど」
「あっ……いいよ。全然大丈夫。待ってるね」
平然を装って返事をしたつもりだが、思いのほか、「嬉しい」と思っている自分に何より動揺した。
冴島はほっとしたように小さく微笑むと、ミーティングに向かっていった。
先に帰り支度を終えた俺は、なんとなく部室には居づらくて、昇降口の辺りで冴島を待っていた。
スマホを眺めながら何をするでもなく待っていると、レギュラー組が体育館から出てきた。
俺の前を通って部室に戻っていく部員たちに「お疲れ様です」と声をかけながら冴島の姿がないことに気がついた。
「冴島待ってんのか?」
通りかかった長嶋先輩がなぜか苦笑するように声をかけてきた。
先輩の隣にいた間宮はなぜか面白くなさそうな顔をしている。
「あ、はい」
すると先輩は親指で体育館の方を指した。
「アイツなら今、体育館出たとこで捕まってるぞ」
「え」
そう言われて体育館のほうを見やる。
入り口の辺りで、肩くらいまでの少し茶色い髪を揺らした女子に後ろから呼び止められたみたいな姿勢で話しをしている冴島が見えた。
「あー……なるほど」
心がざわりとした。
でも、その理由がわからなかった。
「なんかお取り込み中っぽいですね。俺、先に帰ります」
できる限りの笑顔を貼り付けてなんでもないふうに言うと、俺は先輩に頭を下げて校門に向かって足早に歩いた。
遠目に見た冴島は、別にいつも通りの冴島だったように思う。
無愛想で、無表情で。首のあたりに手をやりながら、何度か相槌を打ついつもの冴島の姿。
なのに、なんで俺の胸は今こんなに苦しいんだ。
校門から出ると走るようにして帰った。そこから早く立ち去りたくてしょうがなかった。
「羽鳥!」
こんなときに後ろから呼び止められる。
「……間宮」
俺は心底めんどくさそうに後ろを振り返る。
制服にも着替えずに、そのまま荷物を持って飛び出してきたかのような間宮が見えた。
(だからなんで一番会いたくないってときに限って……)
踵を返して足早に去ろうとする俺を走って追いかけてきた間宮は、俺の肩を掴んで無理やり振り向かせた。
「なんで逃げんだよ」
「別に逃げてないよ」
はあっ、呼吸が少し上がった間宮は
「帰る約束してたんじゃねーのかよ、アイツと」
と、親指で学校のほうを指差した。
「あ、いや、帰る方向が一緒ってだけで……約束ってほどじゃないよ。なんかお取り込み中って感じだったし……」
なんでもない風に笑って見せた。
そんな俺を見て間宮はただ顔をしかめただけだった。
「……じゃあ、なんでそんな泣きそうな顔するんだよ」
──泣きそう……?
人からそう言われて初めて、今自分の胸が苦しいのは泣きそうだったからなんだと気がついた。
「え……なんで……」
「なんでって……知らねぇよ」
間宮はイラついたように地面を軽く蹴った。
でも本当に自分でもよくわからなかった。
なんで今日一日こんな心がざわつくんだろう。なんで急に苦しくなったり、泣きたくなったりするんだろう。自分がわからなくて不安になった。
「ねぇ、間宮」
俺は間宮の肩にすがるように両手を置いて項垂れた。
「なんで……なんでこんな気持ちになるのかなぁ」
頭上で盛大な舌打ちが聞こえてくる。
間宮は大きなため息をひとつ吐くと、俺の顎を掴んで無理やり顔を上に向かせた。
驚いた俺が見上げた間宮の顔は、怒ったような、泣きそうなような、変な顔をしていた。
「お前、マジでなんにも気がついてないのな」
静かな声でそう言われてどっと心臓が波打った。こちらを見る間宮の目には諦めのような切なさが宿っていた。
「俺がお前のこと好きで、ずっと昔から見てるのに、そのお前が他の誰かを見てるって思ったら──」
間宮は苦しそうに眉を寄せた。その目尻が赤く染まってく。俺は目を見開いたままそこから視線を逸らせなかった。
「泣きたくなるに決まってんだろーが」
そう言って、間宮は俺の胸の辺りを突き放すようにトン、と押した。そのまま半歩後ずさるようにして、小さく息を吐くと
「……それと同じだろ」
そう言い捨てた。
なにも答えられなかった。
間宮の気持ちも、自分の気持ちも到底受け止めきれなくて、俺はただ胸の辺りを押さえて、轟々となる自分の心臓の音だけを聞いていた。
「ほんとお前って、バスケのことならいくらでも頭回るのに、こういうことはからきしダメだな」
黙ってる俺に、間宮はいつもの軽口みたいに鼻で笑ってそう言った。
なのに、俺は少しも笑えなくて、何も返すことができなかった──だってそれくらい、その声が優しくて、泣きそうなくらい震えていたから。
「……ごめん」
俺は両手で顔を覆って、喉の奥を振り絞るようにそんな掠れ声を出した。
「間宮、ごめん……っ」
「ふざっけんな、謝んじゃねーよ!」
間宮はいつもの不機嫌そうな口調で言った。
「それじゃ俺が可哀想みたいだろ!」
「うぅ……ごめん~……」
間宮はぐしゃぐしゃと俺の頭を乱暴に掻き回した。
「俺、帰るからな」
そう言ってちらりと後ろに目を向けた。
「ほら、来たみたいだぜ」
間宮の背後、少し離れたところにジャージ姿のままの冴島が立っていた。
「泣かせたんですか?」
「あ?」
イラついたように間宮が振り返る。
冴島が据わった目をしてこちらを見ていた。
「違う! 冴島くん違くて……あと、俺泣いてないから」
「泣いてんじゃないですか」
「てめーが泣かせてんだよ!」
間宮の言葉に冴島は目を見開くと、俺の顔をじっと見つめた。
「じゃ、俺こっちだから」
間宮は俺たちを見て小さく息を吐くと、ひらひらと手を振って帰っていった。
そんな間宮の背中をしばらく見つめていると、
「間宮先輩となんかあったんですか?」
そう怪訝な顔を浮かべながら冴島が切り出した。
「え⁉︎ い……いや、なにもないよ」
両手を振りながら焦ったように答える俺を見て、冴島は何か言いたげな顔をしたけど、それ以上は追求してこなかった。
「そ、それより良かったの? 俺と帰って」
「は? 一緒に帰るって約束したじゃないですか。なんで先に帰ったんですか?」
冴島は不満を滲ませるように言った。
「え、いや……なんか話しかけられてたから……お邪魔かなぁって」
ごまかすみたいにへらりと笑うと、冴島はますます不機嫌そうに眉を寄せた。
「別に、あれは勝手に待たれてただけです」
「あ、そうなんだ。やっぱ冴島くんてモテるんだね。さすがだな~」
こんなこと言いたいんじゃないのに、芽生えそうになる感情をどうにか押し殺したくて言葉が止まらなかった。
「そりゃそうだよね。背が高くて、スポーツ万能だなんて、モテないはずないもんな」
うらやまし~、なんて白々しく笑って見せたが、冴島は少しも笑わなかった。
気まずい沈黙のまま歩き出して、いつもの公園の前まで来た。
「じゃあ、俺こっちだから」
と、信号を渡ろうとしたところで呼び止められた。
「明日も一緒に帰りたいです」
青だった信号が点滅を始める。
「レギュラーは居残り練あるだろ。俺は先に帰るよ」
俺はそう言い残して、信号が赤になる前に駆け足で横断歩道を渡った。
