「──それでは、新入生入場」
拍手が響き、体育館の入り口から真新しい制服を着た一年生たちが入場してくる。
『新入生歓迎会』と題された全校集会で、俺は端に並べられたパイプ椅子にバスケ部のチームTシャツを着て、部活紹介が始まるのを待っていた。
拍手をしながら列を眺めていると、生徒たちがざわめき始めた。
「デカくねぇ?」
「N中の陸上部だった奴だろ? 三年連続で全中優勝したっていう」
みんなの視線の先には、ひときわ目立つ一年生がいた。
周りより頭ひとつ分どころじゃない背の高さと、制服越しでもわかる体格の良さ。
そんな圧倒的な存在感に目が奪われる。
「おい、羽鳥」
隣に座っていた部長の長嶋先輩から、耳打ちするように声をかけられた。
「アイツだよな」
「まあ、そうでしょうね」
“並外れた運動神経を持った新入生がいる”
そんな噂は、この歓迎会の前から運動部の間でまことしやかに流れていた。
(結局は持って生まれた素材だよなぁ)
努力では埋まらない、そんな圧倒的な差に劣等感さえ感じた。
「羽鳥。絶対にアイツ捕まえてこいよ。バスケ部に」
「はぁ」
なんで俺が──そう思わなくもなかったが、先輩の命令は絶対だった。
万年ベンチの俺に回ってくるのはこんな雑用しかないんだろ、そんな卑屈さを振り払えないまま俺は部活紹介が始まるのを待った。
歓迎会を終えたその日の放課後から、校舎前ではさっそく新入生への部活勧誘で盛り上がっていた。
「あー、出遅れた」
まだ帰り支度中だった俺は、教室の窓から校庭を見下ろして、例の一年生を探した。
あのデカさならすぐに見つけられるはず、と思ったけれど、その姿は見当たらなかった。
(もうどっかに入部決めたのか? まあ、普通に考えたら陸上部だよな)
それならそれで別に良かったが、一言くらい勧誘しに行かないと先輩にしばかれる──そう思った俺は、荷物を引っ掴んで教室を飛び出した。
階段を駆け降りている途中で、陸上部のクラスメイトを見かけたので声をかけた。
「相澤くん!」
「おー、羽鳥」
「アイツどうなった?」
「アイツ?」
「あの、一年のさ。ほら、背ェデカい……やっぱ陸上部に入るの?」
「あー、“冴島陸”?」
「ごめん。名前知らないや。でもたぶんその子」
「アイツね……どこの部にも入らないんだって」
「え?」
俺は思わず階段を降りる足を止めた。
「陸上部だけじゃなくて、野球部もバレー部もいろんなとこが声かけに行こうとしてたけどね。『どこにも入りません』つってさっさと帰ってったよ」
「嘘だろ……?」
あの身体で?
才能があって?
みんなが欲しがる存在なのに?
「ほんと、びっくりだよなー」
そう笑うクラスメイトの背中を見送りながら、俺はしばらくその場から動けなくなった。
拍手が響き、体育館の入り口から真新しい制服を着た一年生たちが入場してくる。
『新入生歓迎会』と題された全校集会で、俺は端に並べられたパイプ椅子にバスケ部のチームTシャツを着て、部活紹介が始まるのを待っていた。
拍手をしながら列を眺めていると、生徒たちがざわめき始めた。
「デカくねぇ?」
「N中の陸上部だった奴だろ? 三年連続で全中優勝したっていう」
みんなの視線の先には、ひときわ目立つ一年生がいた。
周りより頭ひとつ分どころじゃない背の高さと、制服越しでもわかる体格の良さ。
そんな圧倒的な存在感に目が奪われる。
「おい、羽鳥」
隣に座っていた部長の長嶋先輩から、耳打ちするように声をかけられた。
「アイツだよな」
「まあ、そうでしょうね」
“並外れた運動神経を持った新入生がいる”
そんな噂は、この歓迎会の前から運動部の間でまことしやかに流れていた。
(結局は持って生まれた素材だよなぁ)
努力では埋まらない、そんな圧倒的な差に劣等感さえ感じた。
「羽鳥。絶対にアイツ捕まえてこいよ。バスケ部に」
「はぁ」
なんで俺が──そう思わなくもなかったが、先輩の命令は絶対だった。
万年ベンチの俺に回ってくるのはこんな雑用しかないんだろ、そんな卑屈さを振り払えないまま俺は部活紹介が始まるのを待った。
歓迎会を終えたその日の放課後から、校舎前ではさっそく新入生への部活勧誘で盛り上がっていた。
「あー、出遅れた」
まだ帰り支度中だった俺は、教室の窓から校庭を見下ろして、例の一年生を探した。
あのデカさならすぐに見つけられるはず、と思ったけれど、その姿は見当たらなかった。
(もうどっかに入部決めたのか? まあ、普通に考えたら陸上部だよな)
それならそれで別に良かったが、一言くらい勧誘しに行かないと先輩にしばかれる──そう思った俺は、荷物を引っ掴んで教室を飛び出した。
階段を駆け降りている途中で、陸上部のクラスメイトを見かけたので声をかけた。
「相澤くん!」
「おー、羽鳥」
「アイツどうなった?」
「アイツ?」
「あの、一年のさ。ほら、背ェデカい……やっぱ陸上部に入るの?」
「あー、“冴島陸”?」
「ごめん。名前知らないや。でもたぶんその子」
「アイツね……どこの部にも入らないんだって」
「え?」
俺は思わず階段を降りる足を止めた。
「陸上部だけじゃなくて、野球部もバレー部もいろんなとこが声かけに行こうとしてたけどね。『どこにも入りません』つってさっさと帰ってったよ」
「嘘だろ……?」
あの身体で?
才能があって?
みんなが欲しがる存在なのに?
「ほんと、びっくりだよなー」
そう笑うクラスメイトの背中を見送りながら、俺はしばらくその場から動けなくなった。
