男が好きなはずなのに、長身の後輩女子が気になって仕方ない

 映画を見終わった私たちは、カフェに行くことにした。
 そこは流行りのお店で、店内は賑わっていた。
 思わず写真を撮りたくなるような、おしゃれなドリンクメニューを多数取り扱っていることが売りだ。
「迷うね……」
「そうっスね」
 私たちはメニュー表とにらめっこをしていた。
「どれで迷ってます?」
「この、季節限定の、バナナのやつかラズベリーのやつ」
 私は二つのドリンクを順に指した。
「やっぱりそこっスよね〜。私もそれで迷ってます」
 すると突然、チャーリーはひらめいた顔をした。頭の上に電球が見えた気がする。
「あ、じゃあ、こういうのはどうっスか? それを一つずつ買って、二人で半分こしましょう。そうすれば、両方飲めますよ!」
 え。
 それってつまり、チャーリーの飲みかけを私が飲んで、私の飲みかけをチャーリーが飲む、と。
 ええ、マジ? なんかそれ、背徳感があるな……。倫理的にセーフなやつ?
 いやいや落ち着け。ただの回し飲みでしょ。女同士だし、何もおかしく、ない。
 
 結局、私はラズベリー、チャーリーはバナナのドリンクを買った。
 席に着いたチャーリーは、不思議そうな顔をしていた。
「これ、随分白いですね。本当にバナナが入っていますかね? ほぼ牛乳なんじゃ?」
「いや、チャーリー。バナナは皮を剥いたら白いでしょ」
 チャーリーの目から鱗がこぼれ落ちた。
「な、なるほど!」
 こいつ、結構アホだな……。
 チャーリーはストローをくわえて、白いバナナドリンクをチュウと吸い込んだ。
 私はそのストローをじっと眺めていた。
 これをシェアするってことは、私はあのストローで飲むんだ。
 それは……関節キス、ってやつなのでは……⁉
 ごくり、と大きく喉が鳴った。
 自分の心臓の音が響いてくる。
 チャーリーの薄い唇が、ストローを介して、私の唇と……。
 チャーリーの唇が、私の唇と……⁉
「……咲良さん、聞いてます?」
 私は現実に引き戻された。
「ごめんごめん。なんだっけ」
「もう、映画の話ですよ。シリーズなんですよね? 他のも見たいっスねえ」
 そうだ。私が生まれる前から人気のSF大作シリーズ。正史となるメインストーリーの他に、数々のスピンオフが制作されているらしい。
 ふと、私はあることに気が付いた。
「そういえば、うち、サブスク入ってるから、もしかしたら見れるかも」
「えっ! いいな〜。見に行ってもいいっスか?」
 チャーリーは大型犬の顔になった。今は犬耳も見えそう。
「え、うん、いいよ」
「マジっスか! やった!」
 チャーリーは大喜びだ。
 あれ? なんか、サラッととんでもない約束をしてしまったのでは……?
 私は、今の発言をよく考え直そうとしたが、
「ああ!」
 突然、チャーリーが素っ頓狂な声を上げたので、遮られてしまった。
「ごめんなさい。間違えて全部飲んじゃいました! 半分こって言ってたのに!」
 は?
 オロオロとしだしたチャーリーの目の前には、空っぽのグラスがぽつんと置かれていた。
 私はワナワナと震えだした。
「チャーリー……」
「ご、ごめんなさい、もう一個買ってきますんで」
「そういう問題じゃ、なーい‼」
 私は顔を真っ赤にして叫んだ。
 チャーリーはきょとんとした顔で私を見ている。
 もう、本当に……こいつは……!