男が好きなはずなのに、長身の後輩女子が気になって仕方ない

 今日は、映画館で待ち合わせ。
 チャーリーは予定の時間ぴったりに現れた。
「すみません、お待たせしました」
「ううん、私も今来たところ」
 嘘だ。実は二十分も前に来て、メイクを何度も直していたなんて、絶対に言えない。
「咲良さん、そのスカートめっちゃ似合いますね」
「そう、普通だけど」
 私は口角が上がるのを必死に堪えながら答えた。
 ベージュのロングフレアスカート。二時間ほど吟味した結果だ。よくぞ、この良さがわかってくれた!
 一方のチャーリーは、普段と変わらない服装だった。オフホワイトのシャツにハイウエストパンツ。もともと長い足をさらに強調する服装だ。
 ……ズルいなあ。
 
「あ、ポップコーン買いましょう! 色んな味がありますよ」
 映画館のロビーで、チャーリーは目をキラキラさせながら言った。尻尾をブンブンと振っているのが見えそうだ。
「ええ? そんなのいらないよ」
「なんでですかー。映画といえばポップコーンっスよ」
 チャーリーはふくれっ面だ。お子ちゃまかよ。
「そんなものボリボリ食べてたら、映画に集中できないじゃん」
「ふーん、そうっスか?」
 そう言って、チャーリーは自分だけポップコーンを買った。

 席に着くと、話題作というだけあって、他のお客さんがたくさんいた。
 映画がそろそろ始まろうというときに、私の前の席にガタイのいい男性が座った。
 げ、この人、でかいな。前がよく見えない……。
「席、変わりましょっか?」
 チャーリーが声をかけてくれた。
「え、ありがとう」
 おお、意外と気が利くな。
 チャーリーが座っていた席に座ると、座席のシートから温もりを感じた。
 うわあ、私のお尻に、あいつの体温が……。
 私は顔がカッと熱くなって、慌てて太ももをぎゅっと閉じた。
「見えます?」
「うん」
「よかった」
 チャーリーは、目を細めてニコニコしている。
 こいつ、優しい……。
 私は胸の奥がキュンと鳴った気がした。
 
 ようやく、映画が始まった。
 それにしても。
 私の真横には、背の高いチャーリーの気配を感じる。
 近いな……。
 彼女の呼吸の音が聞こえる。
 ポップコーンを咀嚼する音とともに、甘いキャラメルの匂いが漂ってくる。
 ごくん、とポップコーンを飲み込む音が聞こえる。
 ……。
 近いな……。
 
 そうこうしているうちに、映画は終わった。スタッフロールまで流れ切って、館内が明転する。
「いやあ、めっちゃ面白かったっスね!」
 チャーリーはホクホクとした笑顔で言った。
「まさか、博士が黒幕だったなんて完全に想定外でした!」
「そ、そうだね」
「家族愛を感じるラストに超グッときましたし」
「ああ、うん」
「あの子役の子は、将来めっちゃ美人になると思います」
「確かに」
「咲良さんはどこが好きでした?」
「え」
 しまった。内容が全然頭に入ってない。
 隣のチャーリーばかり気になっていて、ちっとも集中できなかった……。