男が好きなはずなのに、長身の後輩女子が気になって仕方ない

 学園祭が終わったあと、初めてのサークルの活動日。
 チャーリーは、来なかった。
 出席自由のサークルなので、誰かが来なくても、誰もなんとも思わない。
 でも、私は気が付いた。チャーリーが来なかったことに。
 
 なんとなく、来なかっただけかもしれない。
 よくある体調不良かもしれない。
 でも、チャーリーが私に言った言葉が、頭から離れなかった。
 
 ——もう、近づいたりしませんから
 
 心配になった私は、チャーリーにメッセージを送った。
『今日サークルに来なかったけど、何かあった?』
 そのメッセージはすぐに既読が付いた。
 しかし、何日経っても返信は来なかった。
 
 チャーリーのいない日々は、驚くほどに静かなものだった。
 まるで、色を失った世界で過ごしているような気分だ。
 目が合えばすぐに寄ってきたのに。
 しつこいほどに近くにいたのに。
 どうして、今はチャーリーがいないんだろう。
 
 いるのが当たり前すぎて気が付かなかったけど、あいつがいないと、とても寂しい。
 それはもう、胸が張り裂けそうなほどに。
 
 ああ、もう。
 チャーリーに、会いたいよ。
 
 ていうか。
 そもそもがおかしいでしょ。
 私のこと、好きなんだろ。
 それなのに、なんで離れていくんだよ。
 私は、やりきれない思いで奥歯を噛んだ。
 
 *
 
「ねえ祐介」
 研究室で二人きりになった時、私は祐介に聞いた。
「誰かのこと、好きになったことある? 私は、あんまりない」
「だろうな」
 祐介は笑った。でも、今の私はムカつく気にもならない。
「もし好きな人がいたらさ、そばにいたいって思うよね」
「そうだな」
「好きなのに、そばにいたくないなんてこと、あるのかな」
 祐介は天井を見上げて考え始めた。
「うーん、例えば……自分の好きな相手が、絶対にこっちを振り向いてくれないとわかったら、一緒にいる方がつらいかもしれないね」
 私は、祐介の言葉をゆっくりと噛み締めた。
「まあ、お前はモテるから、そんな苦労は経験ないかもしれないけどな」
 そんな祐介の軽口は、私の耳には届かなかった。
 
 絶対に振り向いてくれないなら。
 一緒にいる方が、つらい。
 
 私はハッとした。
 きっと、チャーリーは、つらいんだ。
 私と、両想いになれないから。
 私は、男の人が好きだから。
 
 でも。
 
 隣にいるだけで落ち着かなくて。
 回し飲みくらいで大騒ぎして。
 雨の日に触れられてドキドキして。
 家に来ると言われて浮かれて。
 共同制作すると聞いて嬉しくて。
 
 気づけば、いつも考えていた。
 チャーリーのことばかり。
 私の頭の中は、チャーリーでいっぱいだ。
 チャーリーと過ごした日々を思い返すと、胸の中が温かくなる。
 
 もしかして。
 私。
 チャーリーのことが、好き、なのか……?
 
 いや。
 いやいや。
 
 どう考えても、好きでしょ。
 
 うわあ、私、チャーリーが好きなんだ。
 男とか女とか関係ない。チャーリーのことが好きなんだ。
 
 もう、バカだな、あいつ。
 両想いだよ、きっと。
 
 家に帰った後、私はこの想いを伝えたくて、チャーリーに何度も電話をかけた。
 しかし、いつまでも出ない。
 くそう、一年生の癖に、生意気な。
 私は苛立ちに任せて、チャーリーにメッセージを送った。
『直接話したいことがあります。土曜の十四時にあなたの家に行きます』
 既読は付いた。返信はない。きっと、ダメではない、ということだろう。
 まったく、既読無視とはいい度胸をしている。
 首を洗って、待ってろよ!