私たちが「いつもの」と呼んでいる居酒屋で、お待ちかねの新歓コンパが始まった。
しかし残念なことに、いきなり敗戦確定であることがわかった。
新入生の男子が自己紹介をした際に「彼女いるー?」というヤジが飛んだ。
そして、三人の新入生男子は、全員が彼女持ちであることが発覚してしまった。
最悪だ。
大学四年生は、卒業が近い。だから、後腐れなく男遊びするにはちょうどいいと思っていた。
それなのに、新入生は全滅。
私の男癖を知っている現在のサークルのメンバーには、相手をしてくれる男子はいない。
つまり、今年はちょうどいい男が周りにいないということだ。
ああ、私の大学生活……。
「はい、じゃあ次は加藤さん!」
幹事の呼びかけにより、長身女が立ち上がった。
あいつだ。
私は警戒心のアンテナをギュンと伸ばした。
「加藤直子です。よろしくお願いしまーす。高校時代はチャーリーって呼ばれていたので、そう呼んでください」
彼女は可愛らしい笑顔で自己紹介をした。
さすがに、女子に対して「彼氏は?」というヤジは飛ばなかった。
っていうか、チャーリーって何?
「何でチャーリー?」
誰かから質問が飛んだ。恐らく、この場の誰もが同じ疑問を持っただろう。
「私は加藤なので、最初は『茶』って呼ばれていました。でも誰かに、チャーリーズエンジェルっぽいよねって言われて、それ以来『チャーリー』になりました」
説明を聞いて、なるほど~、とか、それっぽい~、とかの声が上がる。
いやいや、それだと正確にはエンジェルの方でしょ。チャーリーは指示役。
こうして、チャーリーこと加藤直子の自己紹介は終わった。
なんか、変な奴。
「咲良さん」
しばらく歓談をしていると、グラスを持ったチャーリーが私のところに来て話しかけてきた。
新歓コンパでいきなり挨拶回り? 体育会系なのかな。
「ああ、そんな、挨拶なんていいのに。今日は新歓なんだから」
しかし、そんなことは気にしないという顔で、チャーリーは言った。
「あの、隣、座ってもいいっスか?」
は?
思いがけない発言に、私とその周囲の空気が止まった。
初対面の一年生が、四年生にグイグイ来ているのだ。みんな冷や冷やしながら、こちらの様子を気にしている。
「まあ、はい、どうぞ」
私と隣の女子はお尻をずらして、人一人分のスペースを空ける。
「やったー」
チャーリーは屈託のない笑顔で、その隙間にすっと滑り込んだ。
なんか、ヤバい奴が来たな……。
私は右隣に座ったチャーリーを見上げた。
でっか。
チャーリーは、人懐っこい笑顔でこちらを見下ろしている。
まるで尻尾をぶんぶんと振っている大型犬みたいだ。
「私、咲良さんとお話したかったんスよ」
「……何で?」
笑顔を絶やさないチャーリーに対して、私は怪訝な顔を向けた。
「さっき教室で見かけたとき、『可愛い人いる!』ってなって。これはお近づきにならないとなあ、って思ってたんスよ。いやあ、いざ近くで見てみたら、もっと可愛いっスね!」
チャーリーはゼロ距離で「可愛い」を連発してきた。
顔が熱い。心臓が変な跳ね方をしている。私は膝の上で手をぎゅっと握った。
「……何が目的なの」
声が上ずらないように、私は小さな声で応戦した。
「え、可愛いから可愛いって言っただけっスよ?」
チャーリーはそう言うと、私の顔を覗き込み、優しい微笑みを向けた。
「これから、よろしくお願いしますね」
そう言うと、机の下の私の握りこぶしに手を添えた。
「ばっ……!」
私は心臓が口から飛び出しそうになり、思わず手を引っ込めた。チャーリーは相変わらずニコニコしている。
私は戸惑いを消そうとして、ビールをグッと飲み干した。
男子は不作だし、変な女子には目を付けられるし。
もう、今日はどうなってんだ……。
しかし残念なことに、いきなり敗戦確定であることがわかった。
新入生の男子が自己紹介をした際に「彼女いるー?」というヤジが飛んだ。
そして、三人の新入生男子は、全員が彼女持ちであることが発覚してしまった。
最悪だ。
大学四年生は、卒業が近い。だから、後腐れなく男遊びするにはちょうどいいと思っていた。
それなのに、新入生は全滅。
私の男癖を知っている現在のサークルのメンバーには、相手をしてくれる男子はいない。
つまり、今年はちょうどいい男が周りにいないということだ。
ああ、私の大学生活……。
「はい、じゃあ次は加藤さん!」
幹事の呼びかけにより、長身女が立ち上がった。
あいつだ。
私は警戒心のアンテナをギュンと伸ばした。
「加藤直子です。よろしくお願いしまーす。高校時代はチャーリーって呼ばれていたので、そう呼んでください」
彼女は可愛らしい笑顔で自己紹介をした。
さすがに、女子に対して「彼氏は?」というヤジは飛ばなかった。
っていうか、チャーリーって何?
「何でチャーリー?」
誰かから質問が飛んだ。恐らく、この場の誰もが同じ疑問を持っただろう。
「私は加藤なので、最初は『茶』って呼ばれていました。でも誰かに、チャーリーズエンジェルっぽいよねって言われて、それ以来『チャーリー』になりました」
説明を聞いて、なるほど~、とか、それっぽい~、とかの声が上がる。
いやいや、それだと正確にはエンジェルの方でしょ。チャーリーは指示役。
こうして、チャーリーこと加藤直子の自己紹介は終わった。
なんか、変な奴。
「咲良さん」
しばらく歓談をしていると、グラスを持ったチャーリーが私のところに来て話しかけてきた。
新歓コンパでいきなり挨拶回り? 体育会系なのかな。
「ああ、そんな、挨拶なんていいのに。今日は新歓なんだから」
しかし、そんなことは気にしないという顔で、チャーリーは言った。
「あの、隣、座ってもいいっスか?」
は?
思いがけない発言に、私とその周囲の空気が止まった。
初対面の一年生が、四年生にグイグイ来ているのだ。みんな冷や冷やしながら、こちらの様子を気にしている。
「まあ、はい、どうぞ」
私と隣の女子はお尻をずらして、人一人分のスペースを空ける。
「やったー」
チャーリーは屈託のない笑顔で、その隙間にすっと滑り込んだ。
なんか、ヤバい奴が来たな……。
私は右隣に座ったチャーリーを見上げた。
でっか。
チャーリーは、人懐っこい笑顔でこちらを見下ろしている。
まるで尻尾をぶんぶんと振っている大型犬みたいだ。
「私、咲良さんとお話したかったんスよ」
「……何で?」
笑顔を絶やさないチャーリーに対して、私は怪訝な顔を向けた。
「さっき教室で見かけたとき、『可愛い人いる!』ってなって。これはお近づきにならないとなあ、って思ってたんスよ。いやあ、いざ近くで見てみたら、もっと可愛いっスね!」
チャーリーはゼロ距離で「可愛い」を連発してきた。
顔が熱い。心臓が変な跳ね方をしている。私は膝の上で手をぎゅっと握った。
「……何が目的なの」
声が上ずらないように、私は小さな声で応戦した。
「え、可愛いから可愛いって言っただけっスよ?」
チャーリーはそう言うと、私の顔を覗き込み、優しい微笑みを向けた。
「これから、よろしくお願いしますね」
そう言うと、机の下の私の握りこぶしに手を添えた。
「ばっ……!」
私は心臓が口から飛び出しそうになり、思わず手を引っ込めた。チャーリーは相変わらずニコニコしている。
私は戸惑いを消そうとして、ビールをグッと飲み干した。
男子は不作だし、変な女子には目を付けられるし。
もう、今日はどうなってんだ……。



