男が好きなはずなのに、長身の後輩女子が気になって仕方ない

「あのう、咲良さん。ちょっと相談があるんスけど……」
「おうなんだゲロリー」
 私はじっとりとした目でチャーリーを見た。
「えっと……まだ怒ってます?」
「うそうそ冗談だよ。何?」
 私が笑って言うと、チャーリーもすぐに笑顔になった。
「咲良さんって、今は彼氏とか、そういう相手がいませんよね?」
「うん、いない」
「それで、もしよかったら、私の弟と会ってもらえませんか?」
「え?」
 唐突な思いがけない話に、私は驚いた。
「弟って、いつか噂になってた、高身長イケメンの?」
「はい。弟に咲良さんの写真を見せたら、可愛いから、会ってみたいって言うんですよ。それなら、咲良さんは今フリーだし、ちょうどいいかなって……」
「マジ? いいセンスを持ってるね、弟くんは」
 私はニヤニヤしながら言った。
 イケメンに見た目を褒められた私は、途端に機嫌がよくなってきた。
「弟くんの写真ある?」
「はい、これです。直弘(なおひろ)っていいます」
 私はチャーリーのスマホを覗き込んだ。
「おお……」
 これは確かにイケメンだ。大きくキリっとした目。無造作なマッシュヘア。
 犬に例えるなら、チャーリーはラブラドールレトリバーで、直弘くんはボルゾイって感じ。
 この人が、私を気にしてる? 私は急にドキドキしてきた。
「え、これで彼女とかいないの?」
「ええ、今はいないみたいっスよ」
 うわー。やば。これはお近づきになりたいかもしれない。
 しかし、私はふと気が付いた。
「ねえ、チャーリーの弟ってことは、高校生?」
「はい。高二っス。まだ誕生日前なんで、十六歳」
「おおう……そうか……」
 私は大学四年生の二十二歳。ちょっと年下すぎるか……?
 ……まあ、ギリ、セーフってことで。
「うん、いいよ」
「本当ですか? 直弘も喜ぶと思います」
 チャーリーはそう言うと、なぜか眉が下がり、寂しそうな顔をした。
「ん? チャーリー、何かあった?」
「いえ! 何も! とにかく私は、咲良さんがいい男性と出会える機会があればどんどん提供したいと思ってますんで!」
「そりゃどうも。ありがと」
 いやあ、チャーリーって、いいやつだなぁ。
 私はイケメン高校生との出会いに胸を躍らせた。
 
 *
 
「直弘くん?」
 今日は駅で待ち合わせ。とても背が高い直弘くんのことはすぐにわかった。
「お、咲良さんですね」
 直弘くんは私を見て、くしゃっとした笑顔になった。おお、イケメンだ……。
「今日はよろしくね」
「はい。よろしくお願いします。あ、なんかごめんなさい。いきなり名前で呼んじゃって。いつも姉貴からそう聞いているから」
「いいよいいよ。大抵名前で呼ばれてるから」
 私はそう言って、直弘くんの腕に手をそっと触れた。自然なボディタッチ。私はこうやって男を落としてきた。
 でも、直弘くんは平然としていた。
「じゃあ、行こっか。俺、水族館なんて超久しぶり。楽しみだよ」
 うーん、覚悟はしてたけど、これは女慣れしてるな。主導権は握りづらそう。いつの間にかタメ口になってるし。
「咲良さん、そのニットめっちゃ似合うね。すげー可愛いじゃん」
「ええ〜、そう?」
 私は思わず口角が上がった。イケメンに褒められるって、やっぱサイコーかも。
 どうなるかな、今日のデート……。