男が好きなはずなのに、長身の後輩女子が気になって仕方ない

 ある日、サークルの活動部屋に行くと、女子グループが色めき立っていた。
「それマジ⁉ いいな〜」
「なんの話してるの?」
 私も話の輪に入った。
「咲良さん! 聞いてください。見ちゃったんですよ、チャーリーが、背の高いイケメンと歩いているところ」
「え」
 チャーリーが?
 イケメンと?
「それで、やけに親密そうだったから、彼氏なんじゃないか、って……」
 そう言うと、キャ~、と黄色い声が上がった。
「その人、チャーリーよりも背が高くて、180センチはあったんですよ」
「高身長でイケメンとか、もう属性が強すぎる!」
 そうやって盛り上がる女子たちの横で、私は興味なさそうに言った。
「ふーん。みんな、そういう話が好きだねえ」
「そりゃもう」「ねー!」
 私は呆れた。そんなに他人の恋バナが面白いかね。昔から、そういう話はあまり興味がない。
 
 しかし、そうか。
 チャーリーに、彼氏か。
 あんまり考えたことがなかったけど、あいつもいっぱしの女子大生。彼氏の一人や二人いても、ちっともおかしくない。
 あんな感じだけど、私が知らないだけで、実は経験豊富なのかもしれない。
 私は、ベッドの上で長い足を広げて、イケメンの彼氏を受け入れるチャーリーを想像した。
 考えれば考えるほど、胸がギュッと苦しくなってくる。どうした、私。
 
 しかも相手は高身長ときた。180センチ?
 私みたいなチビとは違って、チャーリーと並んで歩いたら、さぞかしサマになるだろうな。
 ……ちょっと待った。
 今、なんであいつの彼氏なんかと自分を比較してしまったんだ。
 なんだか気持ちが悪くて、背中がぞわぞわした。
 
 ふと、以前チャーリーが言っていた言葉を思い出した。
 ——永遠に離れることのない二人、って感じがするところが好きっス
 そういえば、あいつは恋愛観が激重だった。きっと、その彼氏に身も心も捧げちゃうんだろうな。
 すると、途端に心配になってきた。
 あいつの彼氏って、マトモな男なのかな。
 まさか、ホストとかじゃないよな。いや、ホストが悪いわけじゃないけど、騙されたり、貢いだりしてないよな……。
 うーん、大丈夫かなあ。幸せにしてもらえてるかなあ……?
 
「お疲れさまでーす」
 そうこうしているうちに、チャーリーが部屋にやってきた。
「ちょっとチャーリー!」
 チャーリーはすぐに女子たちにガシっと掴まれて、椅子に座らされた。何が何だかわからず、困った顔をしている。
「さあ、話してもらうよ!」
 そんな、取り調べじゃないんだから……。
「こないだ吉祥寺に行ったでしょ」
「え? まあ、割とよく行きますよ」
「イケメンの彼氏と一緒だったでしょ」
「えええ? 彼氏?」
「隠すなよ〜。あのね、背が高い人と一緒に歩いていたところを見たの!」
「ああ!」
 チャーリーは要領を得たようで、表情が明るくなった。
「それは弟っスね」
 え。
「うちの弟、デカいんスよ」
 チャーリーはニコニコしている。
 しかし、場は完全に白けてしまっていた。
「なんだつまんね」「はい解散解散」
 興味をなくした女子たちは口々に言った。勝手だなあ……。
「そういえばチャーリーって彼氏いるの?」
 誰かが何気なく聞いた。私は思わず耳を大きくし、背筋が伸びた。
「彼氏っていうか……今は恋人はいませんね」
 そのチャーリーの回答を聞いたら、私の口から、なぜかよくわからない言葉がこぼれた。
「よかった……」
「え?」
 チャーリーは目を丸くしている。
「ああ、ごめん! 意味わかんないこと言ったね! 大丈夫だよ、チャーリーにもそのうち恋人ができるよ」
 私が慌てると、チャーリーは頬を赤らめてうつむいた。
「ありがとうございます。そうだといいっスね」
 おや。
 チャーリーのこういう様子、珍しいな。
 なんか、変なの……。