男が好きなはずなのに、長身の後輩女子が気になって仕方ない

 今日は、サークルのメンバーたちとチャーリーの家に来ている。
 この家のプールで遊ぶためだ。
「うおお、マジでプールじゃん……!」
「欧米の映画で見るやつだ……!」
 プールに案内されると、感嘆の声が上がり、みんなワイワイと飛び込んでいった。
 いや、これはすごいよ……。
 巨大な四角いプール。プールサイドにはビーチチェアやパラソルが置いてある。
「うおおチャーリーすげえ!」
 また感嘆の声が上がった。ゴーグルを着けたチャーリーが、河童のようにざぶざぶとバタフライで泳いでいる。
 誰かがチャーリーに「泳いでみてよ」と言ったら、すっかり気をよくして泳ぎだしたのだ。
 もう、今日はこのままでいいよ。私はビーチチェアに横たわりながら、のんびりと河童の姿を眺めた。

 ところが、河童は勢いよくプールから上がってきて、私に近づいてきた。
「さあ、咲良さん、お待たせしました!」
 ゴーグルを外すと、とびきりの大型犬スマイルを向けてきた。眩しい……。
「さあ、入りましょう。水深は120センチなんで、浅めっスよ」
 チャーリーに促され、私は足からゆっくり水に入った。ちょっと冷たいけど、外が熱いからちょうどいい。
 プールに入ると、私の体は立った状態で胸から肩のあたりまで浸かった。深いよ……。
 私はプールのへりをぎゅっと掴んだ。
「ごめんやっぱり怖い……」
「大丈夫ですよ、私がそばにいますから。いきなり泳がないで、まずはここで練習しましょう」
 その言葉に、私の胸は温かくなった。なんか、すごい安心感。
 チャーリーの指示に従い、私はプールのへりに手を置いてバタ足をした。
 うーむ。我ながら、全然できている気がしない。
「お尻が出ちゃってますね。もっと引いてみてください」
 チャーリーはそう言うと、私の腰に手を添えて、そっと下へ押した。
「そうそう、その感じです。まずは姿勢が大事っスからね」
 私の腰に手を当てたまま言った。触れられているところがじんじんと熱い。
 私は腰の手の温もりを意識しないように、必死に足をばたつかせた。
「じゃあ、次は手を離してみましょう。私が支えるんで、安心してください」
 チャーリーはそう言って、私のお腹に手を添えた。
「うう……」
 ちょっとそこは、恥ずかしいかも……。
 私はチャーリーに支えられて、ドキドキしながらプールサイドを離れた。
 すごい、私、泳いでる。
 お腹がちょっとこそばゆいけど、私は船のようにすいすいと水面を泳いだ。
「すごい! 気持ちいいよ!」
「本当っスか! よかった!」
「いやあ! 泳いでみるのも楽し」
 ゴボ。
 あ、ヤバい。
 調子に乗って喋っていたら、私の気道に水が流れ込んできた。
 ヤバい、これ、死ぬ!
 私は頭が真っ白になり、手足をじたばたとさせてもがいた。
「咲良さん!」
 チャーリーは私をぐいっと引き上げた。それでも私は暴れ続けていた。
「咲良さん落ち着いて! もう大丈夫だから!」
 チャーリーは、暴れる私を長い腕で抱きしめて押さえ込んだ。
 私はだんだんと落ち着きを取り戻してきた。ゲホゲホと大きく咳き込む。
「大丈夫ですか?」
 私はゆっくりと息を吸い込んだ。
 しかし体の恐怖が消えず、無意識にチャーリーにぎゅっと抱き着いた。
 人肌の温もりとともに、安心感が全身に広がっていき、恐怖が徐々に消えていった。
 私はそのままプールサイドに引き上げられ、ビーチチェアに寝かされた。
 チャーリーが私の横に座り込み、心配そうに見ている。
「ごめんなさい咲良さん、私のせいで。本当に、咲良さんに何かあったら……」
「ううん、もう大丈夫。ありがとう」
 だけど、チャーリーは暗い顔のままだ。
「ねえ、チャーリー」
 呼びかけると、チャーリーはこちらを見た。私と目が合う。
「ちょっと怖いこともあったけど、あなたのおかげで、私はすいすい泳げて、楽しかったよ」
「咲良さん……」
 チャーリーは大型犬の笑顔を少しだけ取り戻した。

 ……なんだか頬が熱いな。
 今日は日差しが強いから、しょうがないよね……。