男が好きなはずなのに、長身の後輩女子が気になって仕方ない

「サークルの海企画、行かないんスか?」
 うだるような暑い日が続く中、毎年恒例となる海企画の時期がやってきた。
 でも、私は一度も参加したことがない。
 チャーリーからの質問に、私はモゴモゴと答えた。
「うん、ちょっとね……」
「海なんてきっといい男だらけっスよ。咲良さんなんてナンパされまくりなんじゃないっスか〜?」
「それはまあ悪い気はしないけど、平成じゃないんだから、そんなに甘くないでしょ……」
「咲良って、いつも行きたがらないよな。なんでなの?」
 祐介の質問に、私は答えた。
「ほらあ、私、あんまり泳げないし……海にはクラゲとかイモガイとかがいて危ないし……」
 あと、これは言わないけど、一番の理由は、私の足が短くて水着が恥ずかしいから……。
 特に、今年はスーパーモデル体型のチャーリーがいる。絶対に水着姿で横に並びたくない。それはもう公開処刑みたいなものだ。
 すると、チャーリーは何かを思い付いたらしく、パッと華やいだ顔をした。
「じゃあプールにしましょうよ。それなら安全だし」
 私は、その可愛い顔に一瞬騙されそうになったけど、冷静に踏みとどまった。いや、プールも水着じゃん。
「おお、プールも悪くないな。行くならどこがいいかな」
 そんな祐介の問いかけに対して、チャーリーはニコニコと笑った。
「うちなんてどうです?」
「は?」
 チャーリーが変なことを言い出したので、その場のメンバーの視線が集まる。
「うち、プールがあるんスよ。よかったら、皆さんで来ませんか?」
「えっと、ビニールプールじゃないよな」
「いえいえ、普通のプールですよ」
「……もしかして、あんたの家って、超お金持ち……?」

 そういうわけで、海企画とは別に、私を含めたサークルの数名でチャーリーの家に遊びに行くことになった。
 私は本当は嫌だったのだが、祐介が、
「チャーリーに泳ぎを教えてもらいなよ。確か、元水泳部でしょ」
 などと言うのだ。
「もちろん、任せてください! 泳ぐのは大得意なんで!」
 そんなチャーリーのやる気に満ちた目を見たら、もう断れなかった。

 *

 約束の日。駅からチャーリーに連れられて、彼女の家にやってきた。
「はい、こちらです」
 大きくて古めかしい門。門から覗く綺麗な庭園。
 その奥には、立派な邸宅が建っていた。
 ……すごすぎる。なんか、住む世界が違う、って感じ。
「今日は親がいないんで、あんまりお構いできませんけど」
 だだっ広い玄関を抜けて、応接間に通された。
 こんなデカい家に住んでいて、本当にサブスクに加入していないのか……?
「更衣室代わりの空き部屋を用意してあるんで、案内しますね」
「……もしかして、この家ってメイドさんとかいる?」
「あはは、まさか。でも掃除はハウスクリーニングっスね」
「コックはいるでしょ」
「いませんって。たいてい親の手作りですよ」
 うーん、本当かなあ……?

 その後、男女それぞれの部屋で、水着に着替えた。チャーリーは自室で着替えてくるらしい。
 私は、水色のフリル付きワンピース。とにかく体型を隠したかったから、フリルはマスト。
 ふと気が付くと、祐介がこちらを見ていた。
「意外と可愛いじゃん。お前の水着姿は初めて見た気がするな」
「じろじろ見るな変態。料金とるぞ」
 遅れて、チャーリーもやって来た。
「お待たせしました!」
 水着は黒いタンキニだ。露出度は高くないものの、手足が長いせいで、肌色の面積が広いように錯覚する。
 引き締まってるなあ……。綺麗だなあ……。
「おお、咲良さん、そのフリル可愛いっスね!」
 チャーリーはいつものように、尻尾を振りながら近づいてきた。
 可愛い、の評価に、思わず口角が上がる。
 やっぱり、チャーリーに褒められると嬉しい。他の誰かにも同じことを言われた気がするけど。
「いやあ本当に、こういう水着がよく似合いますね!」
 チャーリーはそう言いながら、私の水着のフリルをつまんでひらひらさせた。
「ちょ、やめ……」
 私は赤面しながら手を払いのけた。
「ていうか横に立たないで。体型を比較されちゃうでしょ」
 私は一歩後ずさった。綺麗なんだけど、なんだよこの足の長さ……。本当に同じ人類なのか?
「何言ってるんですか。今日は泳ぎを教えますからね。離れませんよ!」
 げえっ。そういえば、そうだった。チャーリーと、マンツーマンレッスン。
 いったい今日はどうなってしまうんだ…⁉