男が好きなはずなのに、長身の後輩女子が気になって仕方ない

 先日、チャーリーと一緒に見た映画。
 チャーリーは映画の過去シリーズを見たいと言ったので、今日、私の家のサブスクで見ることになった。
 駅でチャーリーと待ち合わせて、家まで連れてきた。
 とうとう、連れてきて、しまった。
 めちゃくちゃドキドキする。
 私、ガードが固かったから、家に誰かを上げるのは初めてだな……。
「お邪魔しまーす」
 でも大丈夫。全力で掃除したから、どんとこいだ。ふっふっふ。
「手を洗ってもいいっスか?」
「うん、洗面所はこっちだよ。タオルは置いてあるやつを使って」
 チャーリーは洗面所へ入った。すると、洗面所から声が上がった。
「あれ? 咲良さーん」
「何、どうした?」
「これが落ちていました。どうすればいいですか?」
 見ると、チャーリーの手には水玉の綿ショーツが。
 ぎゃあ! 洗濯カゴから落ちたのか⁉
 私はそれを電光石火の素早さで奪い取った。
「ごめんごめんごめん! でもこれ洗ったばっかりのやつだから! 清潔だから!」
「あはは、大丈夫ですよ。それにしても、咲良さんらしいキュートな下着っスね」
「ち、違うから! 本当はもっとレースでギンギンのやつとかもあるから!」
 私は叫んでからリビングへ逃げた。
 し、心臓が止まるかと思った……。

「これに座って」
「ありがとうございます」
 私が座椅子を渡すと、チャーリーはそれに座った。
「あれ、咲良さんの椅子は?」
「座椅子は一つしかないんだ。チャーリーが座っていいよ」
「ええ、それじゃあ悪いっスよ。私は床でいいです」
「いやいや、あんたはお客さんなんだから」
「あ、じゃあこうしましょう」
 そう言うと、チャーリーは膝をがばっと空けて、股の下の座椅子をポンポンと叩いた。
「ほら、ここ、空いてますよ!」
「ちょ、ちょっと! そんな、はしたない格好をしたらいけません!」
「いいからいいから」
 チャーリーはそう言うと、私を長い足の間に収めた。

 テレビのリモコンを操作して、映画を再生した。
 チャーリーは、足をだらんと伸ばして座椅子に座っている。
 私は、そのチャーリーに背中を預けて座っている。
 いや、これマズいだろ!
 首の後ろが、ちょうどよく柔らかい。天然のネックピローだ。
 私の腰は、チャーリーの引き締まった太ももにがっちりと挟まれている。もう一生ここから抜け出せない気がする。
 こ、これが、令和の人間椅子! 江戸川乱歩も脱帽する、圧倒的な存在感!
 私は脇の下に汗がにじむのを感じた。おお、どうか、服に染みませんように……。
 
 それにしても。
 人の体って、あったかいなあ……。
 私は全身でチャーリーの体温を受け止めていた。あ、ってことは、私の体温もチャーリーに……。
 あと、どことなく甘い香りがするかも。チャーリーの匂いなのか?
 私は鼻からいっぱいに空気を吸い込んだ。鼻腔から脳へ甘い蜜が抜けるような感覚。
 ヤバい、私、とろけてしまいそう……。
 すると唐突に、頭の上から声が降ってきた。
「咲良さんの髪、いい匂いしますよね。何のシャンプーですか?」
「なっ、やめろ、嗅ぐな!」
 背後のチャーリーに対して、私は抗議の声を上げた。

 そして結局、今回も映画の内容は全く頭に入らなかった。

「今日はありがとうございました! また、遊びに来させてくださいね」
 チャーリーを駅まで送ると、あいつはそう言い残して去っていった。
 ううむ、この調子だと、また来るな……。
 私はスマホを開き、二つ目の座椅子を購入しようと逡巡した。
 そして、結局買わないことにした。