いじらしい人



二人で眠るには狭いシングルベッドでヒダカと共に横になっていた。少しでもずれれば床に落ちそうな程窮屈だったが、身体に触れる温もりは心地良かった。
「ごめん」
ヒダカが不意に謝ってきた。
「……急にどうしたんですか」
「アサガオさんを利用した」
「へえ、どの点で」
「……言わせるな」
恥ずかしがる余裕が出てきたようで少し安心した。天井を見上げていた彼はこちらを向くと胸元に顔をすり寄せる。首に短い髪が当たって少し痒い。
「劇団を作りたいって夢はとっくに叶っていたんだ。ただ売れなかっただけ。見方を変えるだけで良かった」
どこかで聞いた事がある言葉だ。それどころかよく知っている。
「アサガオさんの言葉だよ」
「……直接話しましたっけ」
「ラジオで話していただろ。案外聞いているんだからな」
胸元に顔を埋められ表情がよく見えない。
「ようやく踏ん切りがついた。散々悩んで、後悔もしたけど、今はスッキリしている」
「それは良かっ……⁈」
唇に生暖かいものが触れる。予想外の接触に言葉を詰まらせるとヒダカと目が合った。彼は口角を上げ、目には三日月を浮かべている。
「……勘違いしますよ」
「していいさ」
下半身に熱を覚え身体を引き寄せるとヒダカも熱を持ち始めていた。
「……明日何も予定を入れてないから」
それ以上言葉を続けない。ただそれだけで何が言いたいのか伝わり、キスで返事をした。