「糸目君凄かったよ!!」
「脚本も糸目君が考えたんでしょ?面白かった!」
「お前って、思ったより面白い奴だったんだな!」
「あのまま演劇部に入部しちゃえば?また糸目君が考えた劇見たいし!」
「え、えっと……そ、そやな。みんなおおきに……」
文化祭が終わった放課後。
俺はクラスメイトに囲まれとった。
みんな今まで俺を怖がっとったのに、あの劇のおかげで印象が変わったみたいで、凄い話しかけに来てくれる。
嬉しい!!嬉しいんやけど……耐性がついとらんせいで、うまく言葉が出てこん!!
ヤバいどないしよう。あたふたしか出来へん。
助けて。人見知りやねん俺。
「ほらほらみんな。糸目君は恥ずかしがり屋さんだから、一気に言われると困っちゃうよ!ね?」
困っとった俺の後ろから出てきて、グイッと肩を抱き寄せてきたんは、ニコニコしとる青羽君やった。
でもなんやろ?
いつもみたいな、優しい笑顔とどこか違うような?少しだけ苛立っとるような?
「あ!青羽君!」
「青羽君の英雄姿かっこよかったよ!!」
「最後の悪魔を抱きしめるシーンも最高だった!!いいなぁ〜私も悪魔になりたぁーい」
「いや、歌姫じゃないんかい!!」
「アハハ。みんな観てくれてありがとう。糸目君の考えた話良かったでしょ?」
「そうそう!面白かった!」
「文芸部で本とか作ったらいいんじゃねぇの?俺、読みに行きたい」
「確かに僕も見たいな。どう?糸目君」
「や、やってみときます」
「いや、なんで敬語!?」
青羽君が来てくれたおかげで、緊張がほどけてきよって、少しずつやけどみんなと話すことが出来た。敬語は、まだ外しきらんかったけど。
「青羽君、ずっとずっとおおきにな?俺、青羽君と仲良うしてもろうてから学校が楽しくなってん。俺が考えた作品も劇にしてもろうたし……最後のシーンも、めっちゃ良い終わりになったわ。俺あっちの方が好きやわ」
みんなと話し終わった後、俺と青羽君は文芸部の部室で二人。お疲れ様会ちゅうことで、ジュースで乾杯しとった。
「というかあの悪魔との終わりは、青羽君が考えたん?ほんま一瞬びっくりしたわ」
「あれはごめんね!本当は、折角糸目君が考えた作品に勝手に手を加えるなんて失礼かなって思ったんだけどさ……どうしても悪魔を倒したくなくて」
「青羽君は優しいから、悪い人でも助けたくなるのなんか分かるわ」
「うーん……というよりも」
「ん?」
青羽君は少し困ったような、照れくさいような顔で俺から一瞬目を逸らしたかと思うと、今度は勢いよくカバッと立ち上がって、わざわざ俺の目の前まで来ると、なんでか急に片膝をついてしゃがみ込んできた。
「え!?な、なになに!?」
なんや青羽君らしくない、緊張しとるみたいな動きに、俺まで緊張する。
「糸目君」
「な、なに?」
夕日が差し込む教室で、俺と青羽君の顔が朱く染まる。
心音がーードクンドクン。
めっちゃ聞こえる。
これは、俺の音やろうか?
それともーー青羽君のやろうか?
「僕が悪魔を倒したくなかったのはね、悪魔役をやってる糸目君が、悪魔と自分を重ねて見てる気がしたからなんだ」
「あっ……そ、それは……」
当たっとる。
多分、ここで練習しとるのを見られたあの日に、勘付かれたんやろうなぁ。
「好きな人を斬るなんて、僕には出来なかった。悪いことをしてたとしても、みんなから嫌われていたとしても、僕だけは守ってあげたかったから」
それで急遽、悪魔を倒さないで助けて終わる結末に変えたんやな……やっぱ優しい……って。
「ん?……え?……へ?……え、えっと。い、今、聞き間違いじゃあらへんなら……す、好きって言うた?」
「うん。言った」
当然みたいに答える青羽君。
俺の頭は、パニック通り越してショート寸前なんやけど。
え?ちょい待って。
好き?
青羽君が、俺を?
「ほ、ほんまに?」
「うん。糸目君のことが好き。これからも僕と一緒にいてくれますか?」
それはまるで、いつも憧れるように見とった劇のワンシーンみたいやった。
こんな台詞を、こんな微笑みを、こんな愛され方を、いつか俺もされてみたい。
ずっとずっと、そう思っとった。
「俺も好き……大好きや」
俺の返事に嬉しそうに微笑む青羽君は、俺の右手をそっと手に取ると、ゆっくりと手の甲にキスを一つ落とした。
それはまるで、舞台の上のキラキラした王子様みたいやった。
