ヨクバリなココロなの

 日和が新しい家族の元へ引越しをしてから一週間

 日和は千歳への恋心がそんな急に変わることもなく、複雑な関係になっていた。

「おはよ、日和」

「おはよう……詩織」

「どうしたの?引越し先でなんかあった?」

「ううん、なんでもない」

「ま、言いたくないなら別にいいけど。なんかあったら絶対言いなさいよ?」

「わかった」





 詩織にはああ言ったものの、実際は言えるはずもなく千歳とも距離を置く日常にも慣れてきた頃

 事件は起こった。

 休日のお昼頃、日和がリビングでTVをぼんやりと観ていた時だった。

 ガチャと玄関の扉が開くと同時に聞きなれない音が聞こえてきた。

「千歳先輩……?」

 日和が警戒しながら、玄関に向かうと玄関で倒れ込む千歳を見つけた。

「千歳先輩!」

 千歳の元へ駆け寄り、赤くなった千歳の額を触る。

 案の定千歳の顔は熱く、熱を出していることはあきらかだった。

 どうにかして温かい所へ運ぼうとするも、体重が重たくて運ぶことも出来ずにいると千歳は意識を取り戻して、歩き出した。

「大丈夫……自分で歩く……」

「すみません、非力なばかりに……」

 日和が申し訳なくなり謝ると、千歳は心底不思議そうな表情で首を傾げた。

「どうして、日和ちゃんが謝るの?」

「だって私に力があれば千歳先輩をだ、抱いてソファーに運ぶことも出来たのに……」

「日和ちゃん、普通の女の子にそんな力は無いから安心して」

「でも……」

「ソファーまでなら僕でも行けそうだから、本当に気にしないで」

「すみません、肩貸しますよ」

 日和が千歳のそばに寄り添い、千歳の腕を日和の肩にかける。

「ありがとう」

 千歳をソファーに寝かせて、日和はお母さんに通話をかけた。

 日和の話しを聞いたお母さんは、お父さんにも連絡するからとりあえずは千歳君のことよろしくねと託された。






 千歳の方を見ると、無防備な寝顔が可愛い。

 日和は千歳の寝顔を眺めるのもそこそこにして、頭を冷やす為のシートを冷蔵庫から取り出し、千歳のおでこに貼り付けた。

 苦しそうな表情をした千歳が眠りにつくと、寝言が聞こえてきた。

「母さん……」

 思わず千歳の手を握り、頭を撫でる。

 しばらく千歳の頭を撫でていると、落ち着いてきたのか表情も穏やかなものに変わっていた。

 千歳も気持ち良さそうに眠っている為に、暇を持て余した日和は千歳の為にお粥を作ることにした。






 

 卵粥が完成した頃、千歳も目を覚ました。

「千歳先輩、卵粥作ったんですけど食べられそうですか?」

「日和ちゃんありがとう……いただきます」

 千歳が日和の作った卵粥を一口食べる。

「うん……美味しい……!」

「ありがとうございます!」

 パクパクと卵粥を完食した後、千歳はそのまま再び眠りについた。

 だが、お母さんも龍文さんも帰ってくることもないまま

 日和は食器を洗ったあと、しばらくスマホを弄って時間を潰して居たが、日和も千歳のそばで眠りについていた。