ヨクバリなココロなの

 翌朝日和はいつも通りの時間に起きて、リビングに行く。

 だが、千歳はバスケ部の朝練で既に学校へ行った後だった。

「ご馳走様でした」

「忘れ物は無いの?確認した?」

「したよー」

 お母さんは、洗い物をしながら日和に話しかける。

 日和はTVに映し出されていた占いに釘付けになって観ていた。

「残念!水瓶座のあなたは最下位!自分の気持ちに素直になれず損をしてしまうかも!そんなあなたのラッキーアイテムは2個入りのお菓子!それでは今日も元気にいってらしゃ~い♪」

 占いのコーナーが終わると、家を出る時間になった。

「いってきまーす」

「いってらっしゃい、気をつけてね!」








 学校に着くと、詩織に話しかけに行く。

「おはよー詩織」

「おはよう、千歳先輩と話出来た?」

 日和は首を横に振って、詩織の真横にある席に座る。

「そっかー、あれから何もないの?」

「うん、多分あたしが突き放しちゃったから遠慮してるんじゃないかな?って思うんだけど……」

「だったら、今から話し合いしに行こうよ!ウチも付き合うからさ♪」

「え……」

「そうでもしないと、お互いに遠慮し合って話し合いなんか出来ないでしょ?」

「それもそうだけど……」

 不安に曇る日和の手を取り、握った詩織は微笑みながら力強く言った。

「大丈夫!ウチが隣にいるし、手も繋いでてあげるから!」

 詩織の言葉を聞いてほんの少しだけ不安が和らぐ。

 こうして、日和は詩織に手を引かれながら千歳の教室へと向かって行った。







 千歳の教室に着くと、千歳が気付いて近づいて来る。

 震える手を詩織は握りしめてくれる。

 その手の温もりに背中を押されて日和は千歳の気持ちを聞くことにした。

「勇気を出してくれてありがとう。日和ちゃん……詩織ちゃんも、ここまで日和ちゃんを連れて来てくれてありがとう」

「どういたしましてー」

「それで、この子のことなんだけど……」

 そう言いながら、千歳はあの時千歳に絡んで居た女の子を呼んだ。

「んー?!君は……もしや詩織ちゃん!?」

 すると、その女の子は詩織を見た途端に大はしゃぎし始め詩織の手を日和から奪い取った。

「あの……こ、これは?」

「彼女は入学当初からの友達で詩織のことが気になって仕方ない咲月だ」

「あー!初めまして!大河咲月です。そこに居る詩織ちゃんに惚れた人です!」

「あの、惚れたってどういう……」

 戸惑いながらも詩織は咲月に聞き返す。

「詩織ちゃんの入学式の時に詩織ちゃんを見かけてねー?一目惚れしたんだーんで、千歳と仲良いみたいだったから紹介してくれー!って頼み込んでたの」

「ウチのどこに惚れる要素が……?」

「え?だって、詩織ちゃん一途だし優しいし、芯がある理想の女の子だよ」

「あ、ありがとうございます……」

 あの物怖じしない詩織が押されている。

 珍しい状態にマジマジと見ていると、千歳に声をかけられて現実に戻される。

「日和ちゃん、ちょっとあっちで話をしようか?」

「そうですね」







 誰も居ない音楽室の前で千歳は口を開いた。

「僕ね、1年の頃……ううん、もっと昔から友達とか居ないし、生きることに退屈してたんだ」

 窓を見ながら喋る千歳に見惚れていると

「そんな時、今年の新学期に日和ちゃんと出会った。そこからは不思議と楽しくて、母さんを亡くしてから初めて抱いた感情だったんだ」

「そこで再婚の話を聞いて、正直不満だった。父さんは母さんをもう忘れるの?って……でも、そうじゃないって最近知ったんだ」

「え……?」

「毎月、月命日に手を合わせに行って僕のことを楽しそうに母さんに話してた」

「そこで僕は気付いたんだ。生きることを楽しんでも良いんだって……母さんに報告する為にも退屈に思うことも無いんだって」

 その時、千歳の頬を涙が伝う。

「そこからは今が楽しい。そう思えるのも日和ちゃんのお陰なんだ、だから……ありがとう」

「そんな……あたしの方こそ千歳先輩と出会えて、学んだことも多いの。だから、私と出会ってくれて、紡を救ってくれてありがとう」