ヨクバリなココロなの

 詩織とも再び仲良くなれた日和は、そのことを報告しに千歳の部屋へと赴こうとした。

 だが、家に帰ると玄関には見知らぬ靴が揃えられていた。

「千歳ー!留年してよー!」

「断る」

「えー!」

 やけに楽しそうなその声は明らかに女の子の声で。

 自室に行こうと2階に上がるとその声はより近くなり、ハッキリと千歳の部屋から聞こえてきた。

 お友達だと信じたいのだが、やっぱり不安になる。

「それじゃ、そろそろお暇しようかなー?」

 日和はその言葉でハッとして、千歳の部屋の前から慌てて自室へと入る。

「おー早よ帰れ」

「言われなくても」

 そして千歳の部屋の扉が開き、階段を降りる足音が聞こえ、玄関の扉が開く音を聞き届けた後、日和も玄関へと向かった。

「千歳先輩……ちょっといいですか?」

「いいよ。どうしたの?」

 千歳が答えながら、玄関の扉を閉める。

「詩織とまた仲良くなりました」

「そっか、良かったね」

「はい♪だから、これからはもっともっと千歳先輩との時間も取れるようにしますね!」

「わかった。良かったね」

「はい♪」

 その時、玄関の鍵を開ける音が聞こえてお母さんが帰って来た。

「あら、そんな所で何してるの?」

「なんでもないよ」




 

「千歳君、本当に良いの?」

「大丈夫ですよ」

「ありがとー……ごめんね?」

「お母さん、どうしたの?」

「いやー、醤油切らしてたの忘れててね?」

「それで、僕がお使いを頼まれたんだ。日和ちゃんも来る?」

「はい!」






 家を出て、コンビニに着くと千歳は醤油を手に取る。

「あ、日和ちゃん。いつも使ってる醤油これ?」

「はい!そうです」

「ありがとう、日和ちゃんも買いたいの決まった?」

「はい!これお願いします」

 千歳が会計をし終えて、コンビニから出て来ると日和も千歳の隣を歩き出す。

「日和ちゃん、冷えるでしょ?これ着る?」

「いえ、大丈夫……」

 千歳から上着を着せられ、頭を撫でられる。

「そろそろさ、敬語やめない?」

「え?」

「いや、いつまでも距離感が縮まらないような気がして……」

「じ、じゃあ……千歳君って呼ぶ感じ?」

「うん、父さん達の前ではそう呼んで欲しい……でも、ふたりきりの時はちーくんとかって呼んで欲しい、な?」

「わ……わかった……ち、ちー……くん……」

 とんでもなく気恥しくなり、顔が火照っていくのが分かってしまう。

「よく出来ました」

 千歳にまた頭を撫でられ、嬉しくなった日和は自然と笑顔になっていた。









 翌日のお昼休み日和は千歳の『ちょっとだけ遅れる』との連絡を受けて、千歳に一刻も早く会いたくなり千歳の教室へと向かっていた。

「千歳ー!今日こそお昼ご飯一緒に食べよーよー!」

「断る。先約もあるんだ早く……」

「やだ!今日は絶対私を選んで!」

 千歳と一緒に隣に並んでいた女の子は次第に千歳の腕に絡み付き、上目遣いで千歳に媚びを売っていた。

 その光景を目撃した日和はその場から離れて、千歳に連絡をした。

『ごめん!急用が出来たから今日は無理( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)』

 数分後に『わかったよ。それじゃ、放課後一緒に帰らない?』

 だが、日和はこの光景を目撃してしまった以上いつも通りに振る舞える自信は無かった。

『ごめんね!放課後は詩織と帰るから』