比翼連理—たとえ明日が来なくても、あなたを愛したことだけは消えない—

文化祭当日。

学校は大勢の人で賑わっていた。

陽菜はメイド服姿。
蒼は黒いシャツにエプロン。

「似合ってる」

陽菜が言う。

「そうか?」

「うん」

蒼は少し困ったように笑った。

その笑顔を見て、陽菜の胸は苦しくなる。
病気のせいじゃない。
もっと違う苦しさ。
気づき始めていた。
自分の気持ちに。

夕方。

文化祭は大成功で終わった。
片付けを終えた後。
校舎の屋上へ上がる。

茜色の空。
風が心地いい。

「終わったな」

蒼が呟く。

「ね」

陽菜は笑う。

そして思った。
ずっとこの時間が続けばいいのに。

その夜。
陽菜はベッドの上で天井を見つめていた。

眠れない。
理由は分かっていた。
蒼のことばかり考えている。
笑顔。
声。
横顔。
一緒に過ごした時間。

胸が温かくなる。

そして苦しくなる。

「好きなんだ……」

呟いた瞬間、涙が零れた。
嬉しい涙だった。

だけど同時に怖かった。
好きになればなるほど、失うことが怖くなるから。

数日後。

地元の夏祭り。
浴衣姿の人々で賑わう神社。
陽菜は淡い水色の浴衣を着ていた。
待ち合わせ場所で蒼を見つける。

「お待たせ」

蒼は一瞬言葉を失った。

「どうしたの?」

「いや……」

少し目を逸らす。

「似合ってる」

陽菜の顔が赤くなる。

「ありがとう」

夜店を回る。
りんご飴。
射的。
金魚すくい。
笑い声が絶えない。
幸せだった。
夢みたいだった。

やがて花火大会が始まる。
二人は川辺へ移動した。
空に大輪の花が咲く。

ドン、と音が響く。

光が夜空を染める。
陽菜は花火を見上げた。
綺麗だった。

でも、ふと横を見る。
蒼がいた。

花火ではなく、蒼を見てしまう。

その瞬間。
陽菜は確信した。

好きだ。

どうしようもないほど。