比翼連理—たとえ明日が来なくても、あなたを愛したことだけは消えない—

七月。

蝉の声が校舎中に響き渡っていた。

文化祭まであと一か月。
学校全体がどこか浮き足立っている。
陽菜のクラスでは、喫茶店をすることになった。

「よし!衣装係決めるよー!」

クラス委員の声が飛ぶ。
陽菜は友達と笑いながら話していた。
その時。

「水瀬と桜庭、装飾係な」

誰かが勝手に決めた。

「え?」

「なんで俺」

二人の声が重なる。

教室が笑いに包まれた。

「仲良いじゃん」

「いつも一緒に帰ってるし」

蒼は少し眉をひそめる。
陽菜は照れ臭そうに笑った。

「まあ、いいんじゃない?」

結局。
二人は一緒に準備をすることになった。

放課後。
教室には二人だけが残っていた。
色紙を切る陽菜。
脚立に乗って飾り付けをする蒼。

「水瀬くん」

「ん?」

「その星もう少し右」

「ここ?」

「もうちょっと」

「細かいな」

「大事なの」

そんな何気ない時間。
けれど陽菜にとっては幸せだった。

蒼といると自然に笑える。
病気のことも忘れられる。
限られた時間のことも。
ふと蒼が脚立から降りる。

「どうした?」

陽菜が尋ねる。
蒼は少し考えてから言った。

「陽菜ってさ」

名前で呼ばれた。
初めてだった。
陽菜の心臓が跳ねる。

「な、なに?」

「いつも楽しそうだな」

陽菜は少しだけ目を伏せた。

「そう見える?」

「見える」

「そっか」

本当は違う。

不安な夜もある。
泣きたい日もある。
それでも。

「楽しまなきゃもったいないから」

そう答える。
蒼は静かに頷いた。