比翼連理—たとえ明日が来なくても、あなたを愛したことだけは消えない—

蒼と出会ってから二週間が過ぎた。

最初は会話らしい会話もなかった。
挨拶をしても短い返事しか返ってこない。
けれど陽菜は気にしなかった。
むしろ、その不器用さが少しだけ気になっていた。

「水瀬くん、おはよう!」

朝の教室。

陽菜が声を掛ける。
蒼は教科書から顔を上げた。

「おはよう」

「今日はちゃんと返してくれた!」

「今までも返してた」

「一言だけね」

「十分だろ」

陽菜は思わず笑った。

最近になって気づいた。
蒼は無愛想なだけで、本当は優しい。
昼休みに消しゴムを落とした子へ黙って拾って渡したり、重そうな荷物を運んでいる先生を手伝ったり。

誰も見ていないところで自然に動く。
そういう人だった。

ある日の放課後。

陽菜は図書室で本を借りた帰りだった。
夕日が廊下を赤く染めている。
ふと校庭を見ると、
蒼が一人でベンチに座っていた。

「何してるの?」

声を掛ける。
蒼は少し驚いた顔をした。

「別に」

「別にって顔じゃないけど」

陽菜は隣へ腰掛けた。

沈黙。
風が吹く。
桜の季節は終わりかけていた。
残った花びらが空を舞う。

「……みんなと話さないの?」

陽菜が尋ねた。
蒼は少し考えてから答える。

「慣れてないだけ」

「人付き合い?」

「そう」

「私とも?」

「最初は」

陽菜は少し嬉しくなった。

「じゃあ今は?」

蒼は視線を逸らした。

「……少し慣れた」

その言葉に胸が温かくなる。