比翼連理—たとえ明日が来なくても、あなたを愛したことだけは消えない—

数日後。

陽菜は一人で手紙を書いていた。

窓の外には薄い春の光。

震える手。

何度も休みながら文字を書く。

そして最後のページへ辿り着く。

『蒼へ』

『この手紙を読んでいる頃、私はもう隣にいないかもしれません。』

ペン先が震える。

涙が紙へ落ちる。

それでも書く。

『最初に言っておくね。』

『泣いてもいいです。』

『いっぱい泣いてください。』

『でも、いつか笑ってください。』

『私は蒼の笑顔が大好きだから。』

陽菜は一度ペンを置いた。

息が苦しい。
胸が痛い。

それでも続ける。

『私の人生は幸せでした。』

『蒼に出会えたから。』

『好きになってくれてありがとう。』

『私を愛してくれてありがとう。』

『生きたいと思わせてくれてありがとう。』

涙で文字が滲む。

何度も拭く。

そして最後の一文を書く。

『来年も、その次の年も、桜を見てください。』

『私はきっと、その桜の中にいます。』

『世界で一番大好きな人へ。』

『ありがとう。』

『さようなら。』

『そして――』

『ずっと愛しています。』

そこでペンが止まった。

陽菜は静かに目を閉じる。

書き終えた。

最後の手紙が。

その夜。

窓の外を見る。
遠くの公園。

桜の蕾が少しだけ膨らんでいた。

もうすぐ春が来る。
約束の春。

陽菜は小さく笑った。

「間に合うかな……」

誰にも聞こえない声。

願い。

祈り。

そして、最後の希望。