二月中旬。
夜中に大きな発作が起きた。
病室に医師と看護師が駆け込む。
酸素。
点滴。
慌ただしい足音。
意識が遠のく。
視界が霞む。
その時、陽菜が思い浮かべたのは、やはり蒼だった。
初めて会った日のこと。
文化祭。
夏祭り。
海。
観覧車。
約束した桜。
全部が愛しかった。
全部が宝物だった。
どんな未来よりも。
朝。
陽菜は目を覚ました。
生きていた。
けれど身体は以前より弱っていた。
担当医は何も言わない。
だがその沈黙が、現実を語っていた。
病室へ戻った父は、涙を堪えていた。
陽菜は気付かないふりをした。
父もまた、気付かないふりをした。
それが親子の優しさだった。
窓の外。
少しだけ雪が溶け始めていた。
春が近付いている。
約束の春。
桜の春。
陽菜はそっと目を閉じる。
そして心の中で願った。
あと少しだけ。
あと少しだけ時間をください。
桜が咲くまで。
あの約束の日まで。
蒼と一緒にいたいから。
冬は静かに終わろうとしていた。
けれど運命は、
もうすぐ二人に最後の選択を迫ろうとしていた――。
夜中に大きな発作が起きた。
病室に医師と看護師が駆け込む。
酸素。
点滴。
慌ただしい足音。
意識が遠のく。
視界が霞む。
その時、陽菜が思い浮かべたのは、やはり蒼だった。
初めて会った日のこと。
文化祭。
夏祭り。
海。
観覧車。
約束した桜。
全部が愛しかった。
全部が宝物だった。
どんな未来よりも。
朝。
陽菜は目を覚ました。
生きていた。
けれど身体は以前より弱っていた。
担当医は何も言わない。
だがその沈黙が、現実を語っていた。
病室へ戻った父は、涙を堪えていた。
陽菜は気付かないふりをした。
父もまた、気付かないふりをした。
それが親子の優しさだった。
窓の外。
少しだけ雪が溶け始めていた。
春が近付いている。
約束の春。
桜の春。
陽菜はそっと目を閉じる。
そして心の中で願った。
あと少しだけ。
あと少しだけ時間をください。
桜が咲くまで。
あの約束の日まで。
蒼と一緒にいたいから。
冬は静かに終わろうとしていた。
けれど運命は、
もうすぐ二人に最後の選択を迫ろうとしていた――。


