比翼連理—たとえ明日が来なくても、あなたを愛したことだけは消えない—

二月。

陽菜はほとんど病室から出られなくなっていた。

それでも蒼は来る。
病室の椅子へ座り、他愛ない話をする。

「美琴が陽菜の席守ってる」

「ほんと?」

「誰も座らせない」

陽菜は笑った。

「美琴らしい」

「あと先生がうるさい」

「それも先生らしい」

笑う。

二人で笑う。

でも。
笑うたびに、終わりが近づいている気がした。

ある日の夕方。

夕日が病室を赤く染めていた。
蒼が窓際に立つ。

「雪、止んだな」

「うん」

しばらく沈黙。

そして陽菜が呟く。

「ねぇ」

「ん?」

「もし私が――」

言いかけて止まる。
蒼の表情が曇った。

「その話は聞かない」

即答だった。

陽菜は少し笑う。

「まだ最後まで言ってない」

「分かる」

蒼は窓の外を見たまま言う。

「だから聞かない」

声が震えていた。

「蒼……」

「俺は諦めてない」

振り向く。

その瞳は少し赤かった。

「陽菜が諦めても」

「俺は諦めない」

陽菜の胸が締め付けられる。

嬉しかった。
どうしようもなく。

だけど苦しかった。
蒼にそんな顔をさせたくなかった。

だから陽菜は笑う。

いつものように。

「ありがとう」

それしか言えなかった。