比翼連理—たとえ明日が来なくても、あなたを愛したことだけは消えない—

一月の終わり。

窓の外では雪が降っていた。

白い雪が静かに空から舞い落ちる。
陽菜は病室の窓際に立ち、その景色を眺めていた。
綺麗だった。

けれど、どこか寂しかった。

再入院してから一か月。
病状は確実に進行していた。

歩く距離は短くなり、
階段は使えなくなり、
酸素吸入をする時間も増えた。

医師や看護師は笑顔を見せてくれる。
家族も明るく振る舞う。

でも陽菜には分かっていた。

皆が隠していることを。

自分に残された時間が、そう長くないことを。

病室のドアが開く。

「よう」

蒼だった。

いつものように制服姿。
手にはコンビニの袋。

「今日は何?」

陽菜が笑う。

「プリン」

「また?」

「好きだろ」

「好きだけど」

二人は顔を見合わせて笑った。
その時間だけは、病気のことを忘れられた。

蒼は毎日来ていた。
本当に毎日。
試験前でも。
雪の日でも。
部活がある日でも。
一度も欠かさなかった。

陽菜は嬉しかった。
同時に苦しかった。
蒼が優しいほど、離れたくなくなる。

ある日。

担当医から家族へ説明があった。
偶然、陽菜はその話を聞いてしまう。

「覚悟は必要かもしれません」

その一言だけだった。

それ以上は聞けなかった。

病室へ戻り、布団を被る。

涙が止まらなかった。

怖い。
本当は怖い。
まだ生きたい。
蒼と桜を見たい。
卒業したい。
大人になりたい。
もっと恋をしたい。
もっと一緒にいたい。

だけど、願うほど現実は残酷だった。

その夜。

陽菜はノートを開いた。

机の引き出しに隠している手紙。

少しずつ書き続けていた。
ページは増えていた。

蒼への想いも。

書きながら何度も泣いた。

それでも書き続けた。

自分がいなくなった後、
蒼が前を向けるように。

笑って生きていけるように。

それが最後にできることだと思った。