比翼連理—たとえ明日が来なくても、あなたを愛したことだけは消えない—

以前の蒼なら絶対に言わない言葉だった。

「そっか」

嬉しかった。
本当に嬉しかった。

蒼が前を向いている。
未来を見ている。
それだけで十分だった。

「陽菜は?」

蒼が尋ねる。

陽菜は空を見上げる。

本当の夢はもう叶わないかもしれない。

保育士になる未来。
大人になる未来。
全部。

でも、
それでも、

「私はね」

笑う。

「蒼が幸せになってほしい」

蒼は眉をひそめた。

「それ夢じゃないだろ」

「私の夢だよ」

陽菜は微笑む。
蒼は何も言えなかった。

胸が苦しくなる。
嫌な予感がした。

けれど認めたくなかった。

陽菜はそっと桜の木に触れる。
そして呟いた。

「春になったらまた来ようね」

蒼も木を見上げる。

まだ蕾もない枝。
だけど春は必ず来る。

そう信じたかった。

「当たり前だろ」

蒼は笑った。

「一緒に桜見る約束だからな」

陽菜も笑う。

けれどその笑顔の奥で、
誰にも言えない決意を抱いていた。

もし春まで生きられなくても。
蒼には前を向いて生きてほしい。
泣いてほしくない。
幸せになってほしい。

だから陽菜は、
病室へ戻ったら手紙を書こうと決めていた。

最後まで、蒼のために笑えるように。

それが自分の愛だと思ったから。

そして運命の冬は、静かに二人へ近づいていた――。