比翼連理—たとえ明日が来なくても、あなたを愛したことだけは消えない—

十一月。

冷たい風が街を吹き抜ける頃。
陽菜は一時退院を許された。

期間は長くない。
医師からも無理はしないように言われている。

それでも陽菜は嬉しかった。

病院の外へ出られる。
蒼と一緒に過ごせる。
それだけで十分だった。

退院の日。

病院の正面玄関を出るとそこには蒼がいた。
制服姿のまま。
いつもの少しぶっきらぼうな顔。
でも目だけは優しい。

「おかえり」

その一言に、陽菜の目が潤んだ。

「ただいま」

たった二文字なのに、温かかった。

その週末。

蒼は約束通り陽菜を海へ連れて行った。

冬が近い海は人が少ない。
波の音だけが静かに響いている。

「寒いね」

陽菜が笑う。

「言ったの陽菜だろ」

「だって海行きたかったんだもん」

蒼は呆れながらも笑った。

二人は砂浜をゆっくり歩く。
波が寄せては返す。
空はどこまでも青かった。

陽菜は立ち止まる。

「綺麗……」

心からそう思った。

生きているから見られる景色。
蒼といるから感じられる幸せ。

何気ない時間が宝物だった。

「写真撮ろう」

蒼が言う。

「珍しい」

「記念」

スマートフォンを向ける。

二人並んで笑う。

カシャ。

その一枚が、
後に蒼にとって大切な宝物になることを、
この時の二人は知らなかった。

数日後。

今度は遊園地へ行った。

観覧車。
メリーゴーランド。
ゲームコーナー。

陽菜は子どものようにはしゃいだ。

「次あれ!」

「元気だな」

「今を楽しまなきゃ!」

蒼は少しだけ胸が痛んだ。

陽菜が時々見せる表情。
どこか急いでいるような笑顔。

まるで、限られた時間を必死に集めているみたいだった。