比翼連理—たとえ明日が来なくても、あなたを愛したことだけは消えない—

十月。

病状は少しずつ悪化していた。

本人には分かる。

身体が重い。
息苦しい。
階段も難しい。

しかし蒼の前では笑った。

心配させたくなかった。

ある日の夕方。

屋上庭園への散歩が許可された。

病院の小さな屋上。
金木犀の香りが風に乗る。

「外だー!」

陽菜は両手を広げた。
蒼が苦笑する。

「はしゃぎすぎ」

「だって久しぶりだもん」

二人はベンチへ座った。
夕日が街を染めている。

「ねぇ蒼」

「ん?」

「もしさ」

陽菜は空を見る。

「私がいなくなったらどうする?」

蒼の表情が固まった。

「そんな話するな」

少し強い口調。
陽菜は苦笑する。

「ごめん」

「ごめんじゃない」

蒼は俯いた。

拳を握る。

「俺は考えない」

「え?」

「いなくなる未来なんて考えない」

陽菜は目を見開く。

蒼は続けた。

「治る」

「蒼……」

「絶対治る」

まるで自分自身に言い聞かせるようだった。

「来年も桜を見る」

小指を差し出す。

「約束しただろ」

陽菜の目に涙が浮かぶ。

「うん」

二人の小指が絡む。

約束。

二度目の約束。

その瞬間だけは、本当に未来がある気がした。
しかし現実は残酷だった。