比翼連理—たとえ明日が来なくても、あなたを愛したことだけは消えない—

同じ頃。

蒼もまた陽菜を見ていた。

浴衣姿。
花火に照らされた横顔。
楽しそうに笑う姿。

胸が締め付けられる。
気づいてしまった。

いつからだろう。
もう陽菜が特別になっていた。
会えない日はつまらない。
声が聞きたい。
笑っていてほしい。
守りたい。

それはもう、
友達への感情じゃなかった。

花火が終わる。
人混みの中を歩く。

その時。
陽菜の足が少しふらついた。

蒼が咄嗟に手を掴む。

「大丈夫か?」

「うん」

嘘だった。

少し苦しい。
でも離したくない。
蒼の手が温かかった。
蒼もまた離さなかった。

神社の裏手。
人の少ない場所。
蝉の声だけが響く。
二人は立ち止まる。

沈黙。
心臓の音がうるさい。
陽菜は俯いた。
蒼は拳を握る。
言わなければ、今言わなければ。
後悔する。
そう思った。

「陽菜」

名前を呼ぶ。
陽菜が顔を上げた。
蒼の瞳は真っ直ぐだった。

「俺……」

言葉が詰まる。
それでも続けた。

「陽菜のことが好きだ」

世界が止まる。
風が吹く。
遠くで祭りの音が聞こえる。

「ずっと一緒にいたい」

蒼の声は震えていた。

「だから」

一歩近づく。

「俺と付き合ってほしい」

陽菜の目から涙が溢れた。
嬉しかった。
夢みたいだった。
だけど同時に苦しかった。
自分には秘密がある。
未来を約束できない。
それでも。
今だけは。
この幸せを信じたかった。

「私も……」

涙を拭う。
そして笑った。

「蒼が好き」

蒼の目が大きくなる。

「だから」

小さく頷く。

「よろしくお願いします」

蒼は安心したように笑った。
陽菜も笑った。

二人の恋が始まった。

まだ誰も知らない。
この恋が、かけがえのない宝物になることを。

そして――

残酷な運命が、
すぐそこまで近づいていることを。