あれからというもの。
「理央先輩!」
毎日、毎日。
「こんにちは! 今日はなに食べましたか?」
それはもう、本当に毎日のように。
「昨日の試合、勝ちましたよ!」
よく来るな。
「理央先輩、今度の日曜日予定ありますか?」
「毎日暇なの?」
「え?」
おっと、失言。
「なに? 日曜日?」
「はい! 今度の日曜日予選の決勝戦なんです! もしよかったら、観に来てほしいなーって!」
「俺も出ますよー!」
今日は立花の友達、新庄君も一緒だった。
たしか、新庄君はクォーターバック。
アメフトの試合か。
毎日のようにやって来てはアメフトの魅力を語っていくもんだから、少し興味が出てきた。
ルールブックも買っちゃったし。
「どうですか?」
「そうだな……」
立花は、速水君のことを見ると「もしよかったら先輩も一緒に!」と誘う。
「僕もいいの?」
「もちろんです! 応援してくれる人が多いほうがやる気出るんで!」
速水君に「どうする?」と聞かれたので少し考える。
「分かった。前向きに検討するよ」
「ありがとうございます! 実際に観るとめちゃくちゃ面白いんで、理央先輩に観てほしいです!」
「はいはい」
「待ってまーす!」
そう言い残すと、立花達は嬉しそうに笑って教室に戻って行った。
「毎日すごいね」
「元気だよね」
「そうじゃなくてさ……」
速水君がなにか言いたげな顔をしてるけど、どうした?
そう思っていると、同じクラスのアメフト部の二人が話しかけてきた。
「ほんっと、毎日頑張るねー! 立花は!」
「理央ちゃん、嫌なら嫌ってハッキリ言わないと、立花みたいのは調子乗るぜ」
なにを言ってるんだ?
真意は分からないけど、腹立つ表情なことだけはたしかだな。
「別に嫌とかではないよ。なんだかしらないけど懐かれたなー、くらい」
「プッ! そんくらいか!」
「まあ、立花と理央ちゃんじゃあ、ねえ」
なんだお前ら。
そんなに自分のところの後輩が、他の部活の先輩に懐いているのが気に入らないのか。
ケンカなら買わないぞ。
勝てないし。
「にしてもよー、立花のヤツ」
「なー! 調子乗ってるよな」
「調子乗ってる?」
俺は、どういう意味?
と速水君の方を見た。
速水君も俺と同じような表情を浮かべていた。
「あいつクォーターなんだよ。外国の血が入ってるから体格にも恵まれてんの!」
「アメフトは体格大事だからなー! それこそプロになるなら余計にな!」
「ずるいよなあ! そもそもスタートから差があるって事だろ」
ずるい?
アメフトは、きっと体格の恵まれた方が有利なことには間違いないんだろう。
でも――。
「お前、身長いくつ?」
「俺? 百七十八センチだけど」
「お前は? 体重」
「八十三キロだったかな?」
やっぱりそうだ。
「変わんないじゃん」
「は?」
「だから、立花と身長も体重も変わんないじゃん」
「!」
まあ、体の厚みは違うっぽいけど。
「遺伝の部分もあるかもしれないけど、お前らは変わらないじゃん。にもかかわらず差を感じるのなら、それは努力の差じゃないのか?」
「は……」
「り、理央君!」
速水君が心配そうにしてるけど、ここはハッキリ言っておいたほうがいいな。
「立花が結果を出してるのは、それ相応の努力をしてるからだろ?」
初めて会った日、立花の練習着が泥だらけになっていた。
あれを見ただけで、あいつがどれだけ努力をしているかが分かる。
「お前達は同じ部活で一緒に練習をしてるのに、そんなことにも気づかないのか?」
「なっ!」
「り、理央君ー!」
速水君が必死な表情で俺の腕を引っ張るけど、それどころじゃないよ。
与えられたギフトだけで結果が出る分野なんて、きっとない。
なにをかを成し遂げるには、努力するしかないんだ。
まあ、努力しても結果が伴わないこともあることは知ってるけど。
「嫉妬ばっかりしてないで、お前達も努力したら?」
「う、うるせえな!」
「分かってるよ!」
そんな捨て台詞を吐いてから教室を出て行った二人の後ろ姿をボーッと眺めていると、速水君が「理央君……心臓に悪いよ……」と冷や汗をかいていた。
「なんで?」
「だって、あんな二人に面と向かって正論言うんだもん」
「仕方ないじゃん。二人の言ってる意味が分からなかったんだもん」
「にしてもさー……」
速水君は「もしかして」と少し嬉しそうな顔をした。
「ん?」
「立花君に、興味が出てきたの?」
「興味って……」
そんな嬉しそうに聞くことか?
「理央君が誰かをあんな風に庇うなんて、ちょっと驚いちゃった」
そんな人を薄情者みたいに言わないでよ。
「興味っていうか、普通に尊敬できるよね」
「尊敬?」
「うん」
たとえば、本当に体格だけでアドバンテージがあるのなら、練習で手を抜くことだってできる。
けど、それに甘えずに努力をしてる立花は、すごいと思う。
「あんなに速く走れたら、どんな世界が見えるんだろうね」
「理央君、足遅いもんね」
「ほとんど変わらないでしょ」
お昼休みを告げるチャイムが鳴り始める。
弁当箱をしまって、次の授業の準備をする。
部活の話をしていたからか、早くトランペットに触りたくなった。
「――ッ」
「……かっこいいねー、理央先輩」
「……俺のだから……盗らないでよ……」
「分かってるって!」
時間を伝え忘れて戻って来ていた立花が、まさか廊下でこの会話を聞いていたとは気づきもしなかった。
「理央先輩!」
毎日、毎日。
「こんにちは! 今日はなに食べましたか?」
それはもう、本当に毎日のように。
「昨日の試合、勝ちましたよ!」
よく来るな。
「理央先輩、今度の日曜日予定ありますか?」
「毎日暇なの?」
「え?」
おっと、失言。
「なに? 日曜日?」
「はい! 今度の日曜日予選の決勝戦なんです! もしよかったら、観に来てほしいなーって!」
「俺も出ますよー!」
今日は立花の友達、新庄君も一緒だった。
たしか、新庄君はクォーターバック。
アメフトの試合か。
毎日のようにやって来てはアメフトの魅力を語っていくもんだから、少し興味が出てきた。
ルールブックも買っちゃったし。
「どうですか?」
「そうだな……」
立花は、速水君のことを見ると「もしよかったら先輩も一緒に!」と誘う。
「僕もいいの?」
「もちろんです! 応援してくれる人が多いほうがやる気出るんで!」
速水君に「どうする?」と聞かれたので少し考える。
「分かった。前向きに検討するよ」
「ありがとうございます! 実際に観るとめちゃくちゃ面白いんで、理央先輩に観てほしいです!」
「はいはい」
「待ってまーす!」
そう言い残すと、立花達は嬉しそうに笑って教室に戻って行った。
「毎日すごいね」
「元気だよね」
「そうじゃなくてさ……」
速水君がなにか言いたげな顔をしてるけど、どうした?
そう思っていると、同じクラスのアメフト部の二人が話しかけてきた。
「ほんっと、毎日頑張るねー! 立花は!」
「理央ちゃん、嫌なら嫌ってハッキリ言わないと、立花みたいのは調子乗るぜ」
なにを言ってるんだ?
真意は分からないけど、腹立つ表情なことだけはたしかだな。
「別に嫌とかではないよ。なんだかしらないけど懐かれたなー、くらい」
「プッ! そんくらいか!」
「まあ、立花と理央ちゃんじゃあ、ねえ」
なんだお前ら。
そんなに自分のところの後輩が、他の部活の先輩に懐いているのが気に入らないのか。
ケンカなら買わないぞ。
勝てないし。
「にしてもよー、立花のヤツ」
「なー! 調子乗ってるよな」
「調子乗ってる?」
俺は、どういう意味?
と速水君の方を見た。
速水君も俺と同じような表情を浮かべていた。
「あいつクォーターなんだよ。外国の血が入ってるから体格にも恵まれてんの!」
「アメフトは体格大事だからなー! それこそプロになるなら余計にな!」
「ずるいよなあ! そもそもスタートから差があるって事だろ」
ずるい?
アメフトは、きっと体格の恵まれた方が有利なことには間違いないんだろう。
でも――。
「お前、身長いくつ?」
「俺? 百七十八センチだけど」
「お前は? 体重」
「八十三キロだったかな?」
やっぱりそうだ。
「変わんないじゃん」
「は?」
「だから、立花と身長も体重も変わんないじゃん」
「!」
まあ、体の厚みは違うっぽいけど。
「遺伝の部分もあるかもしれないけど、お前らは変わらないじゃん。にもかかわらず差を感じるのなら、それは努力の差じゃないのか?」
「は……」
「り、理央君!」
速水君が心配そうにしてるけど、ここはハッキリ言っておいたほうがいいな。
「立花が結果を出してるのは、それ相応の努力をしてるからだろ?」
初めて会った日、立花の練習着が泥だらけになっていた。
あれを見ただけで、あいつがどれだけ努力をしているかが分かる。
「お前達は同じ部活で一緒に練習をしてるのに、そんなことにも気づかないのか?」
「なっ!」
「り、理央君ー!」
速水君が必死な表情で俺の腕を引っ張るけど、それどころじゃないよ。
与えられたギフトだけで結果が出る分野なんて、きっとない。
なにをかを成し遂げるには、努力するしかないんだ。
まあ、努力しても結果が伴わないこともあることは知ってるけど。
「嫉妬ばっかりしてないで、お前達も努力したら?」
「う、うるせえな!」
「分かってるよ!」
そんな捨て台詞を吐いてから教室を出て行った二人の後ろ姿をボーッと眺めていると、速水君が「理央君……心臓に悪いよ……」と冷や汗をかいていた。
「なんで?」
「だって、あんな二人に面と向かって正論言うんだもん」
「仕方ないじゃん。二人の言ってる意味が分からなかったんだもん」
「にしてもさー……」
速水君は「もしかして」と少し嬉しそうな顔をした。
「ん?」
「立花君に、興味が出てきたの?」
「興味って……」
そんな嬉しそうに聞くことか?
「理央君が誰かをあんな風に庇うなんて、ちょっと驚いちゃった」
そんな人を薄情者みたいに言わないでよ。
「興味っていうか、普通に尊敬できるよね」
「尊敬?」
「うん」
たとえば、本当に体格だけでアドバンテージがあるのなら、練習で手を抜くことだってできる。
けど、それに甘えずに努力をしてる立花は、すごいと思う。
「あんなに速く走れたら、どんな世界が見えるんだろうね」
「理央君、足遅いもんね」
「ほとんど変わらないでしょ」
お昼休みを告げるチャイムが鳴り始める。
弁当箱をしまって、次の授業の準備をする。
部活の話をしていたからか、早くトランペットに触りたくなった。
「――ッ」
「……かっこいいねー、理央先輩」
「……俺のだから……盗らないでよ……」
「分かってるって!」
時間を伝え忘れて戻って来ていた立花が、まさか廊下でこの会話を聞いていたとは気づきもしなかった。
