君と僕の秘密~永久の鏡~

〇参道・夜

石段を降りる足音が、夜気に吸い込まれていく。

暗い参道を見下ろした。
胸の奥が、じわりと重く沈む。

“見通しの目”は、
物心ついた頃からずっとそこにある。

真道(……俺は……小さい頃から……
 “見通しの目”なんていう圓藤家の血筋が……
 ずっと嫌だった……)

普通の子どもが見ないものが見える。
普通の子どもが感じないものを感じる。

“普通”から外れた力。

幼い真道にとって“特別”ではなく、
ただの“異物”だった。

真道(……父さんに……
 “真道のほうがよく見える”って言われるのも……
 嫌だった……)

褒められているのか。
期待されているのか。

その全部が、幼い胸には重すぎた。

影を見る力。
祓う力。

圓藤家に生まれた時から背負わされた血。
血筋として背負わされた“役目”の証だった。

家族の中でだけ共有される、閉じた秘密。

学校では言えない。
友達にも言えない。
その孤独が、ずっと胸の底に沈んでいた。

真道(……こんな力……
 持って生まれたくなかった……)

でも──
あずさの震えが止まったあの瞬間だけは、
胸の奥の嫌悪がすっと消えた。

真道(……俺の力で……
 あずさが落ち着いたんだ……)

真道はゆっくりと息を吐く。

真道(……血から逃げられないなら……
 ……あずさのために……)

静かに落ちていく“覚悟”。
真道はゆっくりと手を握りしめる。

真道(……この力で……
 あずさを守れるなら……それでもいい……)

嫌いな力。
逃げたかった血。

真道(……嫌いだった……この力……)

前に出す足が、さっきより少しだけ強い。

真道(……好きな人のためなら……
 この力があるのも……悪くない……)

その言葉は、
否定も迷いもなく胸の奥に沈んだ。

真道
(……そうだ……
 俺は……あずさが……好きだ……)

息を吸い込む。

胸の奥が、ゆっくりと熱を帯びる。
静かに沈んでいく本音。

その想いは初めて胸の奥で、
“肯定”として形になった。

その重さが、
真道を前へ押し出していた。

〇あずさの家の角

玄関の灯りが見える。

真道は息を整え、歩き出す足を止めなかった。

真道(……だから……守りたい……
 あずさを……)

その決意は、もう揺らがなかった。