〇夜・圓藤家
玄関を開けると家の中は静かだった。
父の書斎だけ灯りが漏れている。
真道は一度深呼吸する。
そしてノックした。
真道「……父さん。話があります」
父「入れ」
書斎の扉を開ける。
父は資料を広げたまま顔を上げた。
父「例の地点の件か?」
真道は頷く。
真道「はい……今日、神社の祠を調べました」
父の手が止まる。
視線が鋭くなる。
父「祠……?」
真道「はい……祠の方で嫌な揺れ方がして、影が呼んでるような感じがしました。……祠の前に行って扉に手をかけたのですが、祠の中から影が息をしているようでした。」
空気がわずかに張りつめる。
真道は続ける。
真道「……奥に進むと布をかぶせられた何かがあったのですが、その周囲だけ空気が“歪んで”見えました。……ゆっくり布をめくると鏡がありました。……多分……白八咫鏡だと思います。」
沈黙が落ちる。
父は短く息を吸い、椅子にもたれる。
目を細めた。
父「……本当に、あったのか」
真道「伝承だけじゃなかった。
……あそこに“封印の核”があったなんて……
俺も知りませんでした」
父は深く息を吐いた。
「……私は場所までは分からなかった。
白八咫鏡の存在だけは伝えられていたが……
まさか、祠にあったとはな」
真道は眉を寄せる。
「……白八咫鏡なんですね」
父は頷いた。
「ああ……白八咫鏡は“封印の核”だ。
影の残滓を閉じ込めるための……古い神具だ」
真道は視線を落とす。
胸の奥がざわつく。
あずさの顔が浮かぶ。
(……あずさ……)
父は続けた。
「真道。
お前の方が“視える”。
祠の揺れも、影の動きも……私より正確だ」
今日ずっと胸の奥で感じていた違和感。
父の言葉がそれを静かに肯定するようだった。
真道は小さく息を吸う。
「……明日、もう一度行きます。」
父は短く頷いた。
「頼む。
封印が揺らいでいる可能性がある。
……お前にしか分からないことがあるかもしれない。」
書斎の灯りが、
真道の影を長く伸ばした。
〇夕方・神社の参道
夕陽が沈みかけている。
石畳に長い影が落ちる。
あずさ、大学の帰り。
いつものように神社へ向かって歩いてくる。
鳥居をくぐった瞬間──
空気が“沈む”。
胸の奥がざわつく。
あずさ(……なんで……
こんな……苦しい……)
境内の影が揺れている。
いつもより濃い。
黒い。
“こちらを見ている”。
影が、あずさを“見つけた”。
あずさ「……っ……!」
胸を押さえる。
息が乱れる。
影が足元にまとわりつく。
冷たさが皮膚の下に入り込むように広がる。
あずさ「……は……っ……
……やだ……」
祠の前で膝が崩れかける。
肩が震える。
あずさ「……苦しい……
……やめて……」
視界が揺れる。
涙が滲む。
影は、祠の奥へ“誘う”ように揺れていた。
〇大学構内・夕方
真道、講義棟の前を歩いている。
講義棟の影が長く伸びている。
真道、歩きながら空を見上げる。
真道(……なんか……胸がざわつく……
また祠に行かないと……)
ポケットの中でスマホが震える。
画面には“父”の文字。
真道「……父さん?」
通話に出る。
父『神社から異常値の高い影が出てきた。すぐに向かってくれ』
真道「……異常値……?」
胸がざわつく。
父『封印が弱まっているかもしれない……急げ』
通話が切れる。
真道(……封印が弱まって……影が……
──まさか……)
胸が冷える。
真道(……あずさか……?
あずさが……危ない……)
考えるより先に、
大学を飛び出していた。
(……あずさ……待ってろ……)
真道は走り出した。
胸の奥のざわつきが、確信に変わり始める。
玄関を開けると家の中は静かだった。
父の書斎だけ灯りが漏れている。
真道は一度深呼吸する。
そしてノックした。
真道「……父さん。話があります」
父「入れ」
書斎の扉を開ける。
父は資料を広げたまま顔を上げた。
父「例の地点の件か?」
真道は頷く。
真道「はい……今日、神社の祠を調べました」
父の手が止まる。
視線が鋭くなる。
父「祠……?」
真道「はい……祠の方で嫌な揺れ方がして、影が呼んでるような感じがしました。……祠の前に行って扉に手をかけたのですが、祠の中から影が息をしているようでした。」
空気がわずかに張りつめる。
真道は続ける。
真道「……奥に進むと布をかぶせられた何かがあったのですが、その周囲だけ空気が“歪んで”見えました。……ゆっくり布をめくると鏡がありました。……多分……白八咫鏡だと思います。」
沈黙が落ちる。
父は短く息を吸い、椅子にもたれる。
目を細めた。
父「……本当に、あったのか」
真道「伝承だけじゃなかった。
……あそこに“封印の核”があったなんて……
俺も知りませんでした」
父は深く息を吐いた。
「……私は場所までは分からなかった。
白八咫鏡の存在だけは伝えられていたが……
まさか、祠にあったとはな」
真道は眉を寄せる。
「……白八咫鏡なんですね」
父は頷いた。
「ああ……白八咫鏡は“封印の核”だ。
影の残滓を閉じ込めるための……古い神具だ」
真道は視線を落とす。
胸の奥がざわつく。
あずさの顔が浮かぶ。
(……あずさ……)
父は続けた。
「真道。
お前の方が“視える”。
祠の揺れも、影の動きも……私より正確だ」
今日ずっと胸の奥で感じていた違和感。
父の言葉がそれを静かに肯定するようだった。
真道は小さく息を吸う。
「……明日、もう一度行きます。」
父は短く頷いた。
「頼む。
封印が揺らいでいる可能性がある。
……お前にしか分からないことがあるかもしれない。」
書斎の灯りが、
真道の影を長く伸ばした。
〇夕方・神社の参道
夕陽が沈みかけている。
石畳に長い影が落ちる。
あずさ、大学の帰り。
いつものように神社へ向かって歩いてくる。
鳥居をくぐった瞬間──
空気が“沈む”。
胸の奥がざわつく。
あずさ(……なんで……
こんな……苦しい……)
境内の影が揺れている。
いつもより濃い。
黒い。
“こちらを見ている”。
影が、あずさを“見つけた”。
あずさ「……っ……!」
胸を押さえる。
息が乱れる。
影が足元にまとわりつく。
冷たさが皮膚の下に入り込むように広がる。
あずさ「……は……っ……
……やだ……」
祠の前で膝が崩れかける。
肩が震える。
あずさ「……苦しい……
……やめて……」
視界が揺れる。
涙が滲む。
影は、祠の奥へ“誘う”ように揺れていた。
〇大学構内・夕方
真道、講義棟の前を歩いている。
講義棟の影が長く伸びている。
真道、歩きながら空を見上げる。
真道(……なんか……胸がざわつく……
また祠に行かないと……)
ポケットの中でスマホが震える。
画面には“父”の文字。
真道「……父さん?」
通話に出る。
父『神社から異常値の高い影が出てきた。すぐに向かってくれ』
真道「……異常値……?」
胸がざわつく。
父『封印が弱まっているかもしれない……急げ』
通話が切れる。
真道(……封印が弱まって……影が……
──まさか……)
胸が冷える。
真道(……あずさか……?
あずさが……危ない……)
考えるより先に、
大学を飛び出していた。
(……あずさ……待ってろ……)
真道は走り出した。
胸の奥のざわつきが、確信に変わり始める。
