〇あずさの夢の中(深夜)
薄い霧が漂う。
木々の影が揺れている。
どこかで水の音がする。
あずさ、白い息を吐きながら立っている。
あずさ「……ここ、また……」
足元に、黒い影が“すっと”走る。
形はない。ただ、気配だけが濃い。
あずさ(……誰かの気持ちじゃない……
これは……もっと、冷たい……)
影が近づくたび、胸が締めつけられる。
あずさ「やめて……来ないで……」
影がふっと消える。
代わりに、遠くで“鏡面のような光”が揺れる。
あずさ(……鏡……?)
近づこうとした瞬間──
影が背後から触れたような冷たさ。
あずさ「っ……!」
世界が割れるように揺れ、
あずさは目を覚ます。
〇大学・朝の廊下
あずさ、ふらつきながら歩いている。
目の下に薄い影。
夢の余韻がまだ残っている。
真道、廊下の向こうから歩いてくる。
あずさの顔を見て、足を止める。
真道「……あずさ」
あずさ「先輩……おはようございます」
声が少し震えている。
真道「……顔色、悪いな。どうした?」
あずさ「……大丈夫です。ちょっと寝不足で」
真道、じっとあずさを見る。
その視線は“影の揺れ”を見ている。
真道(……境界が乱れてる。
影のざわつきが……まだ残ってる……)
あずさ、視線をそらす。
あずさ「変な夢を見ただけなんです。
……でも、なんか……空気が重くて」
真道「そうか……夢の内容は?」
あずさ「……よく覚えてないです。
ただ……“何か”が近くにいた気がして」
真道、わずかに息を呑む。
真道(……影の気配か……
夢にまで入り込むなんて……
……あずさ……やっぱり……)
あずさ「先輩?」
真道「……いや。無理はするなよ」
あずさ「……はい」
二人、すれ違うように歩き出す。
真道は振り返らないが、
その背中には静かな緊張が宿っている。
真道(……このままじゃあずさが危ない。
……鏡を見れば、確かめられるだが)
廊下の窓から差し込む光が、
あずさの影を細く伸ばしていた。
〇夜・圓藤家
端末が震える。表示されたのは、
“影の異常値”の通知。
真道(……この揺れ方は…………)
ふと、あずさが辛そうにしていた姿が浮かぶ。
真道(……あのとき……影に触れられた時の……)
端末が再び震える。
父からの着信。
真道「……はい」
父『例の地点、また数値が動いた。
原因はまだ分からん』
真道「……明日、大学の帰りに見てきます」
父『頼む。お前の方が“視える”』
通話が切れる。
真道は静かに息を吐く。
真道(……でも、昼間のあずさ……
あれは“偶然”じゃない)
胸の奥がざわつく。
真道(……あずさの影の揺れが……気になる……
やっぱり……確かめたい……)
〇夜・神社の境内
風が冷たい。
鳥居をくぐった瞬間、空気が“沈む”ように変わる。
真道(……影の流れが……ここに集まってる)
境内は静かすぎた。
虫の声も、木々のざわめきもない。
祠の前に立つと、胸騒ぎが一気に強くなる。
木の扉は古く、触れる前から“内側に何かがいる”気配がした。
真道(……この揺れ方……
この前、あずさが苦しそうにしていた時の……
あの“影の触れ方”と……同じ……)
否定しようとしても、
胸のざわつきは消えない。
真道(……嫌な揺れ方だ……
影が……呼んでる……)
真道は祠の扉に手をかける。
祠の中から影が息をしているようだった。
〇祠の中
扉を開けた瞬間、冷気が“ふっ”と漏れ出す。
中は薄暗く、光が吸い込まれるように弱い。
真道が一歩踏み入れると、床板がわずかに鳴った。
その音が、異様に響く。
奥に、布をかぶせられた何かがある。
その周囲だけ、空気が“歪んで”見えた。
ゆっくり布をめくる。
──白八咫鏡。
真道「……これがあの……」
鏡の縁に、黒い気配が薄くまとわりついている。
まるで“誰かの手形”のように残っている。
真道(……影が……誰かに触れた……
いや……“寄った”のか……)
胸が強く締めつけられる。
真道(……あずさか……
やっぱり……)
心の中では、もう否定できなかった。
鏡を見つめながら、真道は静かに息を吐いた。
鏡の奥から、かすかに“水音”のような揺れが
聞こえた気がした。
喉の奥がひりつく。
真道(……まさか……
本当に……)
胸騒ぎだけが確かにそこにある。
真道(……嫌な予感が……当たる……)
鏡を見つめる真道の影が、
わずかに揺れた。
薄い霧が漂う。
木々の影が揺れている。
どこかで水の音がする。
あずさ、白い息を吐きながら立っている。
あずさ「……ここ、また……」
足元に、黒い影が“すっと”走る。
形はない。ただ、気配だけが濃い。
あずさ(……誰かの気持ちじゃない……
これは……もっと、冷たい……)
影が近づくたび、胸が締めつけられる。
あずさ「やめて……来ないで……」
影がふっと消える。
代わりに、遠くで“鏡面のような光”が揺れる。
あずさ(……鏡……?)
近づこうとした瞬間──
影が背後から触れたような冷たさ。
あずさ「っ……!」
世界が割れるように揺れ、
あずさは目を覚ます。
〇大学・朝の廊下
あずさ、ふらつきながら歩いている。
目の下に薄い影。
夢の余韻がまだ残っている。
真道、廊下の向こうから歩いてくる。
あずさの顔を見て、足を止める。
真道「……あずさ」
あずさ「先輩……おはようございます」
声が少し震えている。
真道「……顔色、悪いな。どうした?」
あずさ「……大丈夫です。ちょっと寝不足で」
真道、じっとあずさを見る。
その視線は“影の揺れ”を見ている。
真道(……境界が乱れてる。
影のざわつきが……まだ残ってる……)
あずさ、視線をそらす。
あずさ「変な夢を見ただけなんです。
……でも、なんか……空気が重くて」
真道「そうか……夢の内容は?」
あずさ「……よく覚えてないです。
ただ……“何か”が近くにいた気がして」
真道、わずかに息を呑む。
真道(……影の気配か……
夢にまで入り込むなんて……
……あずさ……やっぱり……)
あずさ「先輩?」
真道「……いや。無理はするなよ」
あずさ「……はい」
二人、すれ違うように歩き出す。
真道は振り返らないが、
その背中には静かな緊張が宿っている。
真道(……このままじゃあずさが危ない。
……鏡を見れば、確かめられるだが)
廊下の窓から差し込む光が、
あずさの影を細く伸ばしていた。
〇夜・圓藤家
端末が震える。表示されたのは、
“影の異常値”の通知。
真道(……この揺れ方は…………)
ふと、あずさが辛そうにしていた姿が浮かぶ。
真道(……あのとき……影に触れられた時の……)
端末が再び震える。
父からの着信。
真道「……はい」
父『例の地点、また数値が動いた。
原因はまだ分からん』
真道「……明日、大学の帰りに見てきます」
父『頼む。お前の方が“視える”』
通話が切れる。
真道は静かに息を吐く。
真道(……でも、昼間のあずさ……
あれは“偶然”じゃない)
胸の奥がざわつく。
真道(……あずさの影の揺れが……気になる……
やっぱり……確かめたい……)
〇夜・神社の境内
風が冷たい。
鳥居をくぐった瞬間、空気が“沈む”ように変わる。
真道(……影の流れが……ここに集まってる)
境内は静かすぎた。
虫の声も、木々のざわめきもない。
祠の前に立つと、胸騒ぎが一気に強くなる。
木の扉は古く、触れる前から“内側に何かがいる”気配がした。
真道(……この揺れ方……
この前、あずさが苦しそうにしていた時の……
あの“影の触れ方”と……同じ……)
否定しようとしても、
胸のざわつきは消えない。
真道(……嫌な揺れ方だ……
影が……呼んでる……)
真道は祠の扉に手をかける。
祠の中から影が息をしているようだった。
〇祠の中
扉を開けた瞬間、冷気が“ふっ”と漏れ出す。
中は薄暗く、光が吸い込まれるように弱い。
真道が一歩踏み入れると、床板がわずかに鳴った。
その音が、異様に響く。
奥に、布をかぶせられた何かがある。
その周囲だけ、空気が“歪んで”見えた。
ゆっくり布をめくる。
──白八咫鏡。
真道「……これがあの……」
鏡の縁に、黒い気配が薄くまとわりついている。
まるで“誰かの手形”のように残っている。
真道(……影が……誰かに触れた……
いや……“寄った”のか……)
胸が強く締めつけられる。
真道(……あずさか……
やっぱり……)
心の中では、もう否定できなかった。
鏡を見つめながら、真道は静かに息を吐いた。
鏡の奥から、かすかに“水音”のような揺れが
聞こえた気がした。
喉の奥がひりつく。
真道(……まさか……
本当に……)
胸騒ぎだけが確かにそこにある。
真道(……嫌な予感が……当たる……)
鏡を見つめる真道の影が、
わずかに揺れた。
