君と僕の秘密~永久の鏡~

〇大学
昼休みのキャンパス。
あずさはサークル棟へ向かう途中、ふと足を止めた。

あずさ「……また、胸がざわざわする」

最近ずっと続いている“説明できない違和感”。
でも、誰にも言えない。

そこへ、後ろから声がした。

真道「……あずさ?」

振り返ると、サークルの先輩・真道が立っていた。

あずさ「あ、真道先輩。こんにちは」

真道「……顔色、悪くないか?」

あずさ「……えっ……そう見えますか?」

真道は少しだけ言いよどむ。

真道「……いや、なんでもない。無理してないならいい」

あずさ「大丈夫ですよ。ちょっと寝不足なだけで」

真道はそれ以上言わなかった。
でも、その視線はどこか心配そうだった。

あずさ(……やっぱり優しいな、真道先輩)

胸のざわつきとは別に、
ほんの少しだけ心が温かくなる。

〇大学シーン(友人との会話)
午後の講義が終わり、あずさは友人と並んで歩いていた。

友人「ねぇ、今日のゼミ来る?」

あずさ「行くよ。……たぶん」

友人「たぶんって何。寝不足?」

あずさ「うーん……なんか最近、変な感じが続いてて」

友人「また? あんた憑かれやすいんだから気をつけなよ」

あずさ「分かってるけど……今回は夢のはずなんだけど、空気が重かったっていうか」

友人「ほら出た。そういう時は神社行っておいで。あんたの避難所でしょ?」

あずさ「……うん。帰りに寄る」

友人は笑って手を振り、
あずさはプリントを抱えて歩き出す。

〇神社シーン(違和感)
夕方。
大学裏の小さな神社。

あずさ「……今日も来ちゃった」

鳥居をくぐった瞬間、ひんやりした風が頬を撫でた。

あずさ「……あれ?」

手のひらが急に冷たくなる。
冬みたいに、じんわりと。

あずさ「なんで……?」

自分の手を見つめる。
でも、何もついていない。

賽銭箱の前で目を閉じる。
深呼吸をして、今日の疲れを吐き出す。

そのとき──
背後で、鈴がひとりでに揺れた。

カラン……。

風は吹いていない。

あずさ「……え?」

振り返る。
誰もいない。

でも、空気だけが少し重い。

あずさ「……やっぱり変な日だな」

神社を出たあと、あずさは大学へ戻る道を歩いていた。
夕暮れの風が少し冷たい。

あずさ「……なんで、あんなに手が冷たかったんだろ」

まだ少しだけ、指先がひんやりしている。

あずさ「……今日は早く帰ろ」

そう呟いて歩き出した、その少し後ろ。

「……あずさ?」

真道だった。
同じサークルの先輩で、帰り道が同じ方向。

あずさ「あ、真道先輩。お疲れさまです」

真道「さっき神社にいたよな。……大丈夫か?」

あずさ「あ、はい。なんかちょっと変な感じがして……」

言葉を選ぶように、少しだけ間が空く。

真道「……なんか…手、冷たそうだったから」

あずさ「はい……どうしてか急に冷えて……」

真道は眉をひそめる。
でも、すぐに言葉を飲み込んだ。

真道(……寄ってきてる……まさか“黒い影”なんて言えるわけない。……怖がらせるだけだし……)

ポケットの中でスマホが震えた。
真道「……父さん?」
画面には“父”の文字。
裁判官であり、影を裁く家系の当主。
真道「……はい。……ええ、分かってます」

“影の異常反応”が出た時の、いつもの確認のやり取り。

真道(……やっぱり、神社の近くか)

あずさの名前は出さない。

真道(巻き込みたくない。……絶対に)

短く答えて通話を切ったあと—

あずさの歩く方向へ視線を戻す。

真道の視界に、
あずさの背後に“黒い影”が一瞬だけ揺れた。

真道「……っ」

思わず一歩踏み出す。

だが、影はすぐに消えた。

真道(……やっぱり、あずさの周りは“普通じゃない”)

あずさは気づかない。
けれど、真道の胸の奥はざわつく。
嫌な予感が、静かに広がっていく。

真道(でも……)

夕暮れの道で、
真道は小さく息を吐いた。

真道(……明日、ちゃんと話そう。先輩として)

風がひゅう、と吹き抜けた。
まるで“誰か”が笑ったように。