君と僕の秘密~永久の鏡~

〇翌朝・大学
教室に入った瞬間、友人がぱっと駆け寄ってきた。

友人「ねぇあずさ、昨日大丈夫だった?なんか顔色悪かったって聞いたけど」

あずさは一瞬だけ胸元に触れ、そっと笑った。

あずさ「……うん。今日は全然平気。ほら、ちゃんと元気でしょ」

友人「ほんとだ。よかったぁ〜!心配したんだから!」

あずさは笑いながら頷く。
その笑顔は、昨日までの“影の冷たさ”をまったく感じさせなかった。

席に座ると、窓から入る風が頬を撫でる。

あずさ(……普通に息ができる……胸も苦しくない……
 ほんとに……戻ってきたんだ)

その瞬間、昨日手を包んでくれた真道の温度が胸に蘇る。

あずさ(……先輩……)

頬が少しだけ熱くなった。


〇大学・サークル室
夕方の光が差し込むサークル室。
机の上には資料、ホワイトボードには今日の議題。

あずさが入ると、先に来ていた真道が静かに手を止めた。

真道「……来たか」

あずさ「はい。……ちゃんと来れました」

その声を聞いた瞬間、真道の表情がほんのわずか緩んだ。

真道「……無理するなよ。
 まだ疲れが残ってるかもしれない」

あずさ「大丈夫です。先輩が……守ってくれたから」

真道の手が一瞬だけ止まる。
その“間”が、あずさの胸をくすぐった。


〇サークル活動中
後輩「真道先輩、ここ分からないんですけど……」

真道「……ここはこう。資料の順番を逆にして……」

あずさが横から覗き込む。

あずさ「先輩、ここの数字……違ってますよ」

真道「……ああ。
 あずさ、これ直してくれ」

あずさ「はい」

二人の指が触れそうで触れない距離。
真道はいつも通り無口なのに、あずさの近くにいるときだけ、
どこか柔らかい。

後輩(……あれ?
 真道先輩、あずさ先輩には優しい……?)

そんな視線にも気づかず、二人は自然に並んで作業を続けた。

あずさ(……普通に……できてる……昨日までの苦しさが嘘みたい……)

真道は横目であずさを見て、小さく息をついた。

真道(……よかった……本当に……戻ってきた)


〇帰り道・並木道
活動を終え、二人で歩く帰り道。

あずさ「……先輩。
 今日……一度も苦しくなりませんでした。
 影も……冷たさも……全部」

真道「……そうか。よかった」

あずさは少し迷ってから、勇気を出して言った。

あずさ「……先輩が……守ってくれたから、です」

真道の足がふっと止まる。

あずさ「……せんぱい……?」

真道はゆっくりと息を吸い、あずさの手に触れた。
指先が触れただけで、あずさの心臓が跳ねる

真道「……あずさ。
 昨日……お前が消えそうになったとき……
 俺……本気で怖かった」

あずさの胸がきゅっとなる。

真道「……祓い手とか関係ない。
 一人の俺として……お前がいなくなるのが……嫌だった」

あずさ「……先輩……」

真道「……あずさ。
 俺は……お前が好きだ。
 お前が笑うと……俺まで救われる」

真道はあずさの手を包み込み、その震えを確かめるように指を絡めた。

真道「……誰よりも……俺があずさを見ていた。
 ……気づいたら……好きになってた……祠であずさを抱きしめたとき
……もう離せないって思った」

あずさの瞳に涙が溢れる。

あずさ「……っ……
私も……先輩が……好きです……」

あずさの額に触れる距離まで近づいた。

あずさ「……真道先輩の声が……私を戻してくれる……
……優しいところも……いつでも守ってくれるところも……
 全部、好き……」

真道はその涙を親指でそっと拭った。

真道「……泣くなよ。
 そんな顔されたら……もっと好きになる」

あずさ「……先輩……」

真道「……これからは……俺のそばにいろ。
 離す気は……もうないから」

あずさは涙の中で笑い、その言葉に静かに頷いた。

あずさ「……はい……ずっと……そばにいます」

真道はその答えを聞いて、ほんの少しだけ微笑んだ。

真道「……あずさ。ありがとう」

夕陽の中で、二人の影がゆっくりと重なった。


〇祠
八咫鏡を確認しに来たふたり。
夕暮れの光が差し込む祠の奥、白八咫鏡は静かに佇んでいた。
二人が近づくと──鏡の表面がふわりと揺れた。

あずさ「……鏡が……」

真道「……あずさを見てる」

あずさが一歩近づくと、鏡の紋様が淡く光り始める。
白い光が、あずさの胸元へ吸い寄せられるように揺れた。

真道「……巫女の血が……完全に受け入れられた証だ」

あずさ「……私……選ばれたんですか……?」

真道はあずさの手を取り、そっと握った。

真道「……ああ。鏡が……お前を認めた」

あずさの瞳が揺れ、涙がまた滲む。

真道「……これからは……俺と一緒に歩いてくれ。
 あずさが選ばれたなら……俺は……お前を守るためにいる」

あずさは涙で笑いながら頷いた。

あずさ「……はい……、先輩と一緒に……歩きたいです」

白八咫鏡が、二人を祝福するように
柔らかく光った。