〇祠の奥
鏡の表面は閉じたまま、しかし縁に刻まれた紋様はまだ細かくひび割れていた。
妖鬼は押し戻されたはずなのに、祠の空気はどこかざわついている。
あずさは真道の胸に倒れたまま、微かに震えていた。
その肩越しに、鏡の縁が脈打つように揺れているのが見える。
真道(……封印が……持っていない……このままじゃ……また開く)
あずさが弱い声で囁いた。
あずさ「……先輩……鏡……まだ……動いてます……」
真道はあずさの手を握り、そっと支えながら鏡を“視た”。
見通しの目が開き、世界の輪郭が反転する。
ひび割れた紋様の一部が、白い光を求めるように揺れていた。
真道(……白杜の血……
封印は……“巫女の血”でしか……)
あずさは不安を隠せない瞳で真道を見上げる。
あずさ「……どうすれば……」
真道は一度だけ息を整え、静かに言った。
真道「……あずさの血が鍵だ。でも……一人じゃ足りない。
封印を“祓う力”で支えられるのは……俺だけだ」
あずさの瞳が揺れる。
あずさ「……じゃあ……二人で……?」
真道「ああ。二人でやる。“巫女の血”と“祓う血”……
どっちが欠けても、封印は完成しない」
あずさは小さく息を吸い、真道の手を握り返した。
あずさ「……先輩がいるなら……できます」
真道はその言葉に、ほんのわずか目を細めた。
真道「……行こう。終わらせる」
〇鏡の前
二人は並んで鏡の前に立った。
あずさの影はまだ揺れているが、真道がそっと手を重ねると落ち着いていく。
真道「……怖かったら言え。
俺が……全部支える」
あずさは首を振った。
あずさ「……大丈夫です。
先輩と一緒なら……」
真道はあずさの手を包み込み、鏡の紋様へそっと触れた。
その瞬間──
白い光があずさの指先から滲み、
淡い蒼の祓力が真道の掌から流れ出す。
二つの光が絡み合い、ひび割れた紋様へ吸い込まれていく。
鏡が低く鳴った。
”……コ……ォォォ……”
紋様がひとつずつ修復されていく。
あずさの影がふっと揺れ、鏡のほうへ吸い込まれるように戻っていく。
あずさ「……あ……
……冷たさが……消えていく……」
真道はその変化を見届けながら、祓力を流し続けた。
真道(……戻れ……
あずさの影は……あずさのものだ……)
光が強まり、鏡の紋様が完全に閉じる。
カシャン──。
祠の空気が静まり返った。
〇封印完了
真道は大きく息を吐き、あずさの手を離さずに言った。
真道「……終わった。
封印は……もう大丈夫だ」
あずさは胸元を押さえ、ゆっくりと息を吸う。
あずさ「……本当に……
先輩と一緒じゃなきゃ……できませんでした……」
真道はその言葉に、少しだけ目を伏せる。
真道「……俺もだ。
あずさがいたから……封印できた」
祠の奥は静かで、封印の光だけが淡く揺れていた。
影に触れた二人の距離は、確かにひとつ深くなった。
その温度だけが、しばらくのあいだ、祠の空気に残っていた。
鏡の表面は閉じたまま、しかし縁に刻まれた紋様はまだ細かくひび割れていた。
妖鬼は押し戻されたはずなのに、祠の空気はどこかざわついている。
あずさは真道の胸に倒れたまま、微かに震えていた。
その肩越しに、鏡の縁が脈打つように揺れているのが見える。
真道(……封印が……持っていない……このままじゃ……また開く)
あずさが弱い声で囁いた。
あずさ「……先輩……鏡……まだ……動いてます……」
真道はあずさの手を握り、そっと支えながら鏡を“視た”。
見通しの目が開き、世界の輪郭が反転する。
ひび割れた紋様の一部が、白い光を求めるように揺れていた。
真道(……白杜の血……
封印は……“巫女の血”でしか……)
あずさは不安を隠せない瞳で真道を見上げる。
あずさ「……どうすれば……」
真道は一度だけ息を整え、静かに言った。
真道「……あずさの血が鍵だ。でも……一人じゃ足りない。
封印を“祓う力”で支えられるのは……俺だけだ」
あずさの瞳が揺れる。
あずさ「……じゃあ……二人で……?」
真道「ああ。二人でやる。“巫女の血”と“祓う血”……
どっちが欠けても、封印は完成しない」
あずさは小さく息を吸い、真道の手を握り返した。
あずさ「……先輩がいるなら……できます」
真道はその言葉に、ほんのわずか目を細めた。
真道「……行こう。終わらせる」
〇鏡の前
二人は並んで鏡の前に立った。
あずさの影はまだ揺れているが、真道がそっと手を重ねると落ち着いていく。
真道「……怖かったら言え。
俺が……全部支える」
あずさは首を振った。
あずさ「……大丈夫です。
先輩と一緒なら……」
真道はあずさの手を包み込み、鏡の紋様へそっと触れた。
その瞬間──
白い光があずさの指先から滲み、
淡い蒼の祓力が真道の掌から流れ出す。
二つの光が絡み合い、ひび割れた紋様へ吸い込まれていく。
鏡が低く鳴った。
”……コ……ォォォ……”
紋様がひとつずつ修復されていく。
あずさの影がふっと揺れ、鏡のほうへ吸い込まれるように戻っていく。
あずさ「……あ……
……冷たさが……消えていく……」
真道はその変化を見届けながら、祓力を流し続けた。
真道(……戻れ……
あずさの影は……あずさのものだ……)
光が強まり、鏡の紋様が完全に閉じる。
カシャン──。
祠の空気が静まり返った。
〇封印完了
真道は大きく息を吐き、あずさの手を離さずに言った。
真道「……終わった。
封印は……もう大丈夫だ」
あずさは胸元を押さえ、ゆっくりと息を吸う。
あずさ「……本当に……
先輩と一緒じゃなきゃ……できませんでした……」
真道はその言葉に、少しだけ目を伏せる。
真道「……俺もだ。
あずさがいたから……封印できた」
祠の奥は静かで、封印の光だけが淡く揺れていた。
影に触れた二人の距離は、確かにひとつ深くなった。
その温度だけが、しばらくのあいだ、祠の空気に残っていた。
