君と僕の秘密~永久の鏡~

〇大学・校門へ向かう道(夕方)
サークルが終わり、
あずさと真道は並んで歩いていた。

以前と同じ帰り道。
でも──
真道の胸の内だけは、もう前とは違う。

あずさ「今日、思ったより早く終わりましたね」

真道「……ああ。そうだな」

返事は短い。
けれど、声の温度はどこか柔らかい。

真道(……好きだって自覚した途端に……
 どう話せばいいか分からなくなるとか……
 情けないな……)

そんなことを思いながら歩いていると、校門が見えてきた。

そのとき、ただならぬ妖気のようなものが、
あずさに“憑こうとしている”気配がする。

真道は反射的にあずさの横顔を見た。

真道「……あずさ……心配だから、送るよ」

あずさは驚いたように瞬きをした。

あずさ「えっ……いえ、大丈夫です。
 先輩のほうが遠いですし……」

真道「……本当に大丈夫か?」

あずさは気を遣うように、いつもの優しい笑みを浮かべた。

あずさ「大丈夫です……
 ちょっと疲れてるだけで……
 心配してくれてありがとうございます」

真道は一瞬だけ迷ったが、あずさの言葉を尊重した。

真道「……分かった。気をつけて帰れよ」

あずさ「はい。先輩も……」

あずさは校門を出ていく。

その背中を見送りながら、真道の中の違和感は消えなかった。

真道(……あの“憑こうとする気配”……
祠で感じた……いや……もっと濃い……
 ……祠に行く。確かめないと……)

真道は神社の祠へ向かった。


〇大学サークル後・校門
夕方の風が少し冷たかった。
あずさは真道と別れて、校門を出た。

昨日も一昨日も、“あの夜”のような不穏な感じは来ていない。

あずさ「……大丈夫。今日は普通……」

そう思いながら歩き出す。
ふと、背中に“視線”のようなものを感じた。

振り返る。誰もいない。

あずさ「……気のせい……」

そう言い聞かせて歩き出す。

家へ向かう道の途中でふと、足が止まった。

あずさ「……神社のほう……行ってみようかな……」

理由なんてない。
まるで、何かに“呼ばれている”ように。

あずさは小さく息を吸い、神社へ続く坂道へ足を向けた。

歩くほどに、背中に“視線”のようなものを感じる。
神社に近づくほど、その視線は濃くなっていった。

あずさ「……っ……」

怖い。でも足は止まらない。
あずさは無意識に、神社へ向かって行った。


〇神社・参道(夕暮れ)
校門であずさと別れたあと、真道は迷いなく神社へ向かった。
夕暮れの参道は静かで、風の音すら薄い。

真道(……あの“憑こうとする気配”……
 あずさに触れようとしていた……
 放っておけるわけがない……)

足取りは速い。
けれど焦りではなく、確かめるための静かな決意。


〇祠の前
祠の前に立った瞬間、空気の密度が変わった。

真道(……濃い……)

影が沈むように重く、境内全体が薄暗く見える。
真道は祠の奥、白八咫鏡のある場所へ視線を向けた。

そして“見通しの目”を開く。


〇見通しの目・発動
世界の輪郭が静かに反転する。
光と影の層が入れ替わり、祠の奥に潜む“本当の姿”が浮かび上がる。
そこに黒い影が、ゆっくりと形を持ちはじめていた。

輪郭がある。重さがある。影ではない。──妖鬼。

真道(……実体化してる……
 封印が……弱まってる……)


〇祠の前
見通しの目を開いた真道の視界に、実体化しつつある妖鬼の影が
浮かび上がる。
そのとき参道の奥から、ふらふらと歩いてくる あずさの姿。

真道「……あずさ……?」

足取りはおぼつかず、焦点の合わない瞳。
まるで誰かに引かれているように、祠へ向かって真っ直ぐ歩いてくる。

あずさ
「……ぁ……」

返事にならない声。意識がどこか遠い。

真道(……これは……あずさじゃない……
 妖気に引かれて……操られてる……)

あずさの膝が、ふっと崩れた。
真道は反射的に駆け寄り、倒れ込むあずさの身体を
両腕でしっかり抱きかかえた。

真道「あずさ……!」

あずさ
「……っ……ぁ……」

意識はほとんどない。
身体は完全に真道に預けられている。

真道はそのまま、あずさを胸に抱き寄せるように支えながら、
祠の奥──妖鬼へ視線を向けた。

妖鬼の影が揺れ、赤い光のような目が真道を射抜く。
真道はあずさを抱いたまま、一歩、前へ踏み出した。

真道「……あずさには……触らせない」

声は低く、静かで、決意を込めた声だった。

あずさの体温が腕にかかる。
その重さが、真道の決意をさらに強くした。

真道(……あずさは守る……絶対に……)

妖鬼の影が大きく揺れ、祠の空気が震える。
真道は見通しの目を使い、妖鬼の動きを捉えていた。
そして、あずさの身体に黒い“憑依の影”が絡みついているのが視えた。