君と僕の秘密~永久の鏡~

■ 導入(あずさ視点)
昼休みのキャンパス。
あずさはサークル棟へ向かう途中、ふと足を止めた。

あずさ「……また、胸がざわざわする」

最近ずっと続いている“説明できない違和感”。
でも、誰にも言えない。

そこへ、後ろから声がした。

真道「……あずさ?」

振り返ると、サークルの先輩・真道が立っていた。

あずさ「あ、真道先輩。こんにちは」

真道「顔色、悪くない?」

あずさ「えっ……そんなにですか?」

真道は少しだけ言いよどむ。

真道「……いや、なんでもない。無理してないならいい」

あずさ「大丈夫ですよ。ちょっと寝不足なだけで」

真道はそれ以上言わなかった。
でも、その視線はどこか心配そうだった。

あずさ(……優しいな、真道先輩)

胸のざわつきとは別に、
ほんの少しだけ心が温かくなる。

■ 大学シーン(友人との会話)
午後の講義が終わり、あずさは友人と並んで歩いていた。

友人「ねぇ、今日のゼミ来る?」

あずさ「行くよ。……たぶん」

友人「たぶんって何。寝不足?」

あずさ「うーん……なんか最近、変な感じが続いてて」

友人「また? あんた憑かれやすいんだから気をつけなよ」

あずさ「分かってるけど……今回は夢のはずなんだけど、空気が重かったっていうか」

友人「ほら出た。そういう時は神社行っておいで。あんたの避難所でしょ?」

あずさ「……うん。帰りに寄る」

友人は笑って手を振り、
あずさはプリントを抱えて歩き出す。

■ 神社シーン(違和感)
夕方。
大学裏の小さな神社。

あずさ「……今日も来ちゃった」

鳥居をくぐった瞬間、ひんやりした風が頬を撫でた。

あずさ「……あれ?」

手のひらが急に冷たくなる。
冬みたいに、じんわりと。

あずさ「なんで……?」

自分の手を見つめる。
でも、何もついていない。

賽銭箱の前で目を閉じる。
深呼吸をして、今日の疲れを吐き出す。

そのとき──
背後で、鈴がひとりでに揺れた。

カラン……。

風は吹いていない。

あずさ「……え?」

振り返る。
誰もいない。

でも、空気だけが少し重い。

あずさ「……やっぱり変な日だな」

神社を出たあと、あずさは大学へ戻る道を歩いていた。
夕暮れの風が少し冷たい。

あずさ「……なんで、あんなに手が冷たかったんだろ」

まだ少しだけ、指先がひんやりしている。

あずさ「……今日は早く帰ろ」

そう呟いて歩き出した、その少し後ろ。

「……あずさ?」

真道だった。
同じサークルの先輩で、帰り道が同じ方向。

あずさ「あ、真道先輩。お疲れさまです」

真道「さっき神社にいたよな。……大丈夫?」

あずさ「あ、はい。なんかちょっと変な感じがして……」

言葉を選ぶように、少しだけ間が空く。

真道「……手、冷たそうだったから」

あずさ「はい……なんか急に冷えて」

真道は眉をひそめる。
でも、すぐに言葉を飲み込んだ。

真道(……寄ってきてる……“黒い影”なんて言えるわけない。
……怖がらせるだけだし……)

ポケットの中でスマホが震えた。
真道「……父さん?」
画面には“父”の文字。
裁判官であり、影を裁く家系の当主。
真道「……はい。……ええ、分かってます」

“影の異常反応”が出た時の、いつもの確認のやり取り。

真道(……やっぱり、神社の近くか)

あずさの名前は出さない。

真道(巻き込みたくない。……絶対に)

短く答えて通話を切ったあと—

あずさの歩く方向へ視線を戻す。

真道の視界に、
あずさの背後に“黒い影”が一瞬だけ揺れた。

真道「……っ」

思わず一歩踏み出す。

だが、影はすぐに消えた。

真道(……やっぱり、あずさの周りは“普通じゃない”)

あずさは気づかない。
けれど、真道の胸の奥はざわつく。
嫌な予感が、静かに広がっていく。

真道(でも……)

夕暮れの道で、
真道は小さく息を吐いた。

真道(……明日、ちゃんと話そう。先輩として)

風がひゅう、と吹き抜けた。
まるで“誰か”が笑ったように。