儚き少女は気高きあやかし王に愛されます


◯東地区・酒屋の二階(ゆずると翠の部屋)・ゆずるside

三畳ほどの和室で、人が入ってこられるほどの大きな窓からは外からの月明かりが差している。
氷が入った袋をゆずるの頬にあて、翠は心配そうにゆずるの顔を覗き込む。

翠「結構腫れてる……痛いでしょ?」

ゆずるはこくりと頷く。

翠「蛙の奴め。人間だからって容赦ないんだから」

ゆずるモノ『この世は力が全て。私のように弱いものは、暴力でねじ伏せられる』

ゆずる(私は死ぬまで一生、こうして生きていくのかな……会いたいよ。お母さん、お父さん……っ)

泣きそうになるゆずるの手を翠が握り、ゆずるに微笑む。

翠「大丈夫だよゆずる。何があっても、私がゆずるを守ってあげるから」

ゆずる(翠ちゃん……)

ゆずるモノ『ここに来た時、話せない私をみんなが煙たがった。だけど、翠ちゃんだけが私を受け入れてくれた。翠ちゃんがいるからここで頑張れる』

ゆずる(翠ちゃんは私の大切な友達……)

ゆずるは翠の肩に顔を寄せる。
夜は深まり、布団の上で寝転ぶ翠。
ゆずるは一人窓辺で月を見上げる。

翠「ゆずるは月が好きだね。ずっと見てて飽きないの?」

翠の問いに、ゆずるは笑顔で首を横に振って、全然飽きないと伝える。

ゆずるモノ『月は、太陽のないこの世界で唯一、光をくれる』

ゆずる(月のあやかしがいるとしたら、どんな姿をしているのかな?きっとすごく綺麗なあやかしだろうな)

ゆずるは笑みを浮かべながら月を見上げ続ける。