儚き少女は気高きあやかし王に愛されます


◯東地区・酒屋・厨房・ゆずるside

お座敷を出て厨房に入ると、麻美はゆずるを怒鳴りつける。

麻美「何してくれてんのよっ!あの方は太客なんだから失礼がないようにと、あれほど言ったじゃない!!」

声を荒げる麻美。
側で見ていた翠は、ゆずると麻美の間に入る。

翠「麻美さん落ち着いてください」

麻美「落ちつけるわけないでしょ!まったく……人が足りないから雇ったけど、とんだハズレくじだったわ。裏方なら大丈夫かと思ったけど、喋れない子なんて、雇うんじゃなかった」

麻美はぶつぶつと言いながら、不機嫌顔で厨房を出ていく。

ゆずるモノ『そう、私は話すことができない。その理由は、七年前のあの戦争が関わっている』
『響きあう銃声、絶望し泣き叫ぶ人の声。今でも忘れない。両親は私を助けるために、敵兵に撃たれて亡くなった。私の目の前で……。それ以来、私は話すことができなくなったのだ』
※血を流し倒れているゆずるの両親、それを目の当たりにしたゆずるの絵。

両親のことを思い出し、ゆずるは辛くなる。