儚き少女は気高きあやかし王に愛されます


◯東地区・酒屋・玄関・ゆずるside

【酒屋】あやかし達が人間の女と酒を飲み交わす場で、夜のみ営業。ゆずるが住み込みで働いている。

麻美「遅い!」

【麻美】(あさみ)四十代女性、一重の吊り上がった目、酒屋の責任者

ビクッと肩を上げ、眉を吊り上げ怒る麻美を見上げるゆずる。

麻美「どこをほっつき歩いてたのよ!早く食事の支度をして!」

俯いたゆずるは震えながら頷く。
氷のように冷たい目で、麻美はゆずるを見下ろす。

麻美「……あんたみたいな訳アリを働かせてあげてるんだから、少しは感謝しなさいよね。よそ者のくせに」
ゆずる「……」

ゆずるモノ『よそ者。もう何度、そう言われただろうか』『戦争で両親を亡くし孤児になった私は、行くあてもなく彷徨っていたところ、この地区に辿り着き、麻美さんの元で働くようになったのだ』

あやかし達が入ってくると、麻美はころっと表情を変え笑みを浮かべる。

麻美「いらっしゃいませ。さあ、お上がりください」

ゆずるは入ってきた蛙のあやかし達に深々と頭を下げる。
あやかし達が見えなくなると顔を上げ、靴を脱ぐと酒屋に入る。