儚き少女は気高きあやかし王に愛されます


◯東地区・花の丘・昼・ゆずるside

花が咲き誇る花の丘、しゃがみながら楽しそうに花を摘むゆずる。
近くに立った王牙は岩の上に座り、その様子を見ている。

ゆずる(あ、いいこと思いついた)

ゆずるは花の冠を作ると、王牙の頭の上にかぶせる。
にっこりと笑うゆずるに、王牙は瞬きをする。

ゆずる(あれ……思ってた反応と違う。こういうのは、子供すぎたかな)

王牙は頭に乗った花の冠を手に取り見ると、ゆずるの頭に乗せる。

王牙「お前の方がよく似合う」

真っ直ぐに目を見られながら言われ、ゆずるは照れる。


◯東地区・森の中・昼

摘んだ花を供え、祠の前で手を合わせるゆずる。
その後ろに立つ王牙。

ゆずる(お母さん、お父さん、私、犬神の王牙様の奥さんになることになりました。今日のその報告と紹介に来ました)

立ち上がるゆずる。

王牙「終わったか?」

譲は頷くと着物からノートとペンを取り出す。

ゆずる【王牙様は、この祠に封印されていたと聞きましたが、どうして、封印されていたんですか?】

王牙「あの祠に私を封印したのは、私の父だ」

ゆずる(お父様が……?)

ゆずる【どうしてですか?】

王牙「大あやかしである犬神を両親を持つ私は、最強であることが当たり前だった。そのため、常に強さばかりを求めていた。そんな私を見て、父は何を思ったのか、愛する心を持ってほしいと言い、私をあの祠に封印したのだ」

ゆずる(愛する心……)

王牙「もしかすると、私の封印が解けたのは、お前のおかげなのかもしれんな」

ゆずる(私の……?)

王牙「私はずっと、お前がこの祠に来るのを見ていた。飽きもせず毎日毎日やって来るその姿に、いつしか、興味を持つようになった」「もしかすると、お前への想いが、私を四百年の眠りから覚まさせたのかもしれん」

王牙(この娘を見ていると、胸が苦しくなる。泣いていると、どうにかしてやりたいと思う。他の男に触れられていると、腹の底から怒りが湧く)

王牙「愛がなんなのか、私には分からない。だが、お前に側にいてほしいと思う」

ゆずる(王牙様……)