儚き少女は気高きあやかし王に愛されます


◯異界(王牙の屋敷)・昼・玄関

玄関前で王牙とゆずるを見送る優里と真里。

王牙「では、行ってくる」
真里「はーいお気をつけて!」

ゆずる(本当に一緒に行くんだ)

王牙はゆずるを横抱きにすると、空に飛び立つ。


◯異界(王牙の屋敷)・昼・中庭・優里side

松の木やツツジが咲く中庭で、物干しスタンドに洗濯物を干す真里と縁側であぐらをかく優里。

優里「にしても不思議だよな」
真里「何が?」
優里「人間嫌いの王牙様が、なんでああも人間に良くするんだ?ましてや妻にだなんて……確かに、ゆずるは悪い奴じゃないと思うけど」
真里「でも、王牙様、かなりゆずるのことが好きみたい」※ゆずるの寝室での二人を思い出し、真里は「ふふっ」と笑う。
優里「でもさ、いきなり封印が解けたのは変な話じゃないか?大あやかしであるお父上が施した封印は、そう簡単に解けるものじゃなかったはず」
真里「それは、王牙様が強くて、お父上よりも偉大なあやかしだってことじゃない?」
優里「だとしてもな……」

優里(俺に酒屋のことを調べさせただけじゃない。地区の統括者達を調べろと言ってきた。王牙様は帝国を築くことになどに興味はないし、自分にさえ害がなければいいはずなのに、なぜ……)(昔からあの方のお考えは分からないが、これも全て、ゆずるのためなのか?)

頭を悩ませる優里。

優里「はあ……」

大きなため息をつき、縁側に倒れ込む優里に、真里が優里の顔に洗濯物を被せる。

真里「サボってないで少しは手伝ってよ」
優里は「俺は夜間の仕事で疲れてるんだよ。屋敷のことはお前がやってくれ」

そう言い、背を向ける優里に、真里は優里の耳を引っ張る。

真里「冗談言ってると耳引っこ抜くわよ」
優里「いててててっ!分かった!分かったからその手を離せ!」

立ち上がった優里は仕方がなさそうに洗濯物を干し始める。