◯異界(王牙の屋敷)・夜・ゆずるside
*ここでプロローグの場面に*
黒い煤のトンネルを通り、ゆずるを異界に連れ帰った王牙。
格式高い和屋敷がいくつも立ち並ぶ城のある異界の中。
空には太陽がなく、恍惚と輝く月が出ていて、夜桜が咲き誇る。
胸に抱き抱えていたゆずるを下ろす王牙。
王牙「もう一度聞く。お前はどうしたい?」
ゆずるモノ『親を亡くした私にとって、あそこが、翠ちゃん隣が、私の居場所だと思っていた』※緑に裏切られたことが頭に浮かぶ。『そもそも、初めから私に居場所なんてなかった。ただ都合よく使われていただけ』
王牙を見上げると、じっとゆずるを見ている。その瞳は優しい。
ゆずる(ここにいたい。王牙様の側に。でも……迷惑じゃないのかな。私は人間で、言葉を話すこともできない。どう考えてもお荷物すぎる)
王牙「余計なことは考えるな。お前がどうしたいかだ」
ゆずる(王牙様……)
ゆずるモノ『やっぱり、王牙様はお優しいな……』
王牙はゆずるの頬に触れる。
王牙「私といたいか?」
頷くゆずるに、王牙は嬉しそうな笑みを唇に浮かべる。
王牙「……なら、私の言うべきことは一つだ」
王牙はゆずるに片手を差し出す。
王牙「ゆずる。私の伴侶になってくれぬか?」
ゆずる(伴侶……それって、奥さんってことだよね?)
ゆずるモノ『みんなの前で堂々と宣言しちゃってたけど、どうして、私を奥さんに……』
ゆずる(……もしかして。いや、そんなはずは。だって、王牙様はあやかしだもの。でも……それ以外の理由って何??)
ゆずるは自分を指差し、手でハートを作る。※ジェスチャーで「私のことが好きなんですか?」と聞いている。
王牙「好き……?なんなんだそれは」
ゆずる(人を好きになることに、あやかしと人間の気持ちは異なるのかな)
ゆずるは自分を指差し、両手で丸を作る。※ジェスチャーで「私でいいんですか?」と聞いている。
王牙「お前がいい。お前じゃなきゃダメなんだ」
王牙の言葉が胸に響くゆずる。
ゆずるモノ『居場所なんてなかった。誰にも必要とされなかった。でもこの方は、私を必要だと言ってくださっている』『だから私は、この方のために生きようと思った』
ゆずるはそっと王牙の手を取る。
王牙はゆずるの腰に手を当てるとグイッと引き寄せる。
ゆずるは王牙の瞳に引き込まれる。

