儚き少女は気高きあやかし王に愛されます


◯東地区・酒屋の二階(ゆずると翠の部屋)・夜・ゆずるside

月明かりがテラス部屋で、一人、鏡台で髪を梳かすゆずる。

ゆずるモノ『王牙様の屋敷を出て数日が経った。私は休みなく働く毎日。同じ日々に繰り返し。でも、一つだけ変わったことがある。それは、あれから妙にあやかし達からの扱われ方がいいこと。源河だけじゃない、店に来る他のあやかしにも、気を遣われている気がする。中には、貢物をしてくるあやかしもいた』※ゆずるに貢物をするあやかしの絵。

ゆずる(どうしてなんだろう……)

鏡に何かが映った気がして、ゆずるは振り向く。
窓辺に王牙がいて、空中に浮いている。

ゆずる(王牙様……!?どうしてここに??)

驚きながらゆずるが窓に近づくと王牙は部屋の中に入る。

王牙「……変わりはないか」

ゆずるが頷くと、王牙は手に持っていた風呂敷をゆずるに渡す。

ゆずる(なんだろう……)

ゆずるが中を開けると、高価な着物が入っている。

王牙「つぎはぎだらけのではなく、この着物を着ろ」

ゆずる(そんな、こんな高価な着物受け取れない)

風呂敷を突き出すゆずる。

王牙「私がやると言っているんだ。黙って受け取れ」

ゆずるは受け取り会釈をすると風呂敷を置き、鏡台の引き出しから紙とペンを取り出す。

ゆずる【どうしてこちらに?】

王牙「……お前がどうしているのか気になった」

ゆずる(気にかけてくださっているんだ)

ゆずる【ありがとうございます。でも、私は元気いっぱいですので、大丈夫ですよ】

ノートを見せながら、ゆずるは笑顔を浮かべ王牙を見上げる。

ゆずる(王牙様の瞳は、月のようにお美しい……)

ゆずる【王牙様の瞳は、綺麗な金色ですね。まるで月のようです】

王牙「そうか?」

ゆずる【はい!私、月が好きです。月は、この国を唯一照らしてくれる存在ですから】

笑顔のゆずるをじっと見つめる王牙。
ゆずるは不思議そうに首を傾げる。

ゆずる(王牙様、どうしたんだろう……?)

そこで廊下から足音が聞こえる。

王牙「もう行く。私がいるから、安心して眠れ」

言いながら王牙はゆずるの頬を撫でると、窓辺から出ていく。
部屋のドアが開き、翠が入ってくる。

翠「ゆずる?」

振り向いたゆずるの頬は赤く染まっている。

翠「どうしたの?頬赤いよ?」

そう言われ、ゆずるは両手で頬に触れる。

ゆずる(熱い……)

翠「布団敷いて寝るよ」

翠と布団を敷くゆずる。そこでふと思い、窓辺の目を向ける。

ゆずる(私がいるからって……どういうこと?)