儚き少女は気高きあやかし王に愛されます


◯東地区・夜・王牙side

空を飛び街を散策する王牙。
廃墟のビルの屋上に飛び降り街を見下ろす。

王牙(随分と荒れ果てたものだな……)

王牙モノ『封印されている間に、この国は変わった。隅に隠れて生きていたはずのあやかし達が人間を支配下に置いている』『優里の話では、七年前に世界的な戦争が起こり、この国は甚大な被害を受けた。そして、東西南北、四つの地区に分かれ、あやかしが統括者として君臨していると……』

王牙(だが、ここまで文明が衰退しているとはな。ちらほらと近未来的な建物の残骸などはあるが、街並みは私がいた頃の江戸と大して変わらん)

そこに優里が空から降りてやってくる。

優里「王牙様、ゆずるが働いていた酒屋の場所が分かりました」
王牙「案内しろ」

酒屋の正面の建物の屋根に降り立ち、見下ろす王牙と優里。

王牙「これか」
優里「はい。酒屋はあやかし達が人間の女達と杯をかわす場です。ゆずるはあの酒屋で調理師として働いていたようです」
王牙「なるほど。あやかし達の娯楽場ということか……」

王牙(あのゲスな蛙どもが好みそうなことだ)

優里「王牙様が戻ってきてくださって、本当に良かったです。この七年間、王牙様がいないのをいいことに、あやかし達は好き放題でしたから」「……あの、王牙様。一つ聞いてもいいですか?」
王牙「なんだ」
優里「どうしてあの人間を助けたのですか。俺が知る限り、王牙様は人間が大嫌いのはずでしょう?それなのに、どうして」
王牙「……」

王牙は少しの間の後、答える。

王牙「あの娘、毎日、祠に手を合わせに来ていた」※王牙が祠の中からずっとゆずるを見ていた。そのことが分かる絵。
優里「祠?王牙様が封印されていたあの祠ですか?」※王牙は四百年前、実に父親により祠に封印されていた。理由は、王牙が誰彼構わず切り殺してしまう冷酷無慈悲な男だったから。
※王牙の封印が解かれたのは、ゆずるが強力な霊力を体に宿していたからで、それがのちに王牙の命を救うことになる。後のストーリーの中でまたその説明をする。

頷く王牙。

王牙「果物に花、供え物までして飽きずにやって来た。雨の日も雪が降ろうとも……」※ゆずるが森を訪れている絵。

王牙モノ『粗末な着物に、栄養の行き届いていない細い体。話せないからか、酒屋でも良い扱いはされていなかったのだろう……』『自分が生きることで精一杯のはずなのに他者を思いやる……』※王牙は人間を醜悪な生き物だと思っている。それなのに美しい心を持つゆずるに興味を持った。

王牙「優里、この地区の統括者を調べろ」
優里「統括者をですか?」
王牙「特にこの東地区の統括者をだ」

王牙は優里を置き一人空へと飛ぶ。

優里「ちょ、王牙様……!?」

優里は困惑した顔で空に飛び立った王牙を見上げる。