儚き少女は気高きあやかし王に愛されます


◯異界(王牙の屋敷)・ゆずるの寝室(洋風)・夜・ゆずるside

ベッドの上にゆずるを下ろす王牙。

王牙「真里、この娘の怪我を手当し、身なり整えて寝かせろ」
真里「えっ、この子ですか?」
王牙「早くしろ」
真里「は、はいっ!」

真里はゆずるの前にやってくる。

真里「あなた、名前は?」
ゆずる「……」
王牙「名はゆずる。言っておくが、その娘は口がきけん」
真里「えっ!そうなの?」

真里の言葉に、ゆずるは控えめに頷く。

真里「そう……それは困ったわね」
王牙「何も意思疎通ができないわけではない。投げかければちゃんと返す」

王牙は引き出しからノートとペンを出す。

王牙「文字は書けるか?」

ゆずるは頷き王牙から紙とペンを受け取る。

ゆずるモノ『戦争が始まる前は、私は普通に学校に通っていた。文字の読み書きはできる』

ゆずる(この王牙っていうあやかし……どうして私の名前を知っているんだろう)

王牙「なら、そこに書き記せ」

そう言うと、王牙は寝室を出ていく。

ゆずる(連れ来られるまま来ちゃったけど、ここにいてもいいのかな)

真里「私は真里。王牙様にお仕えしている犬神の妖怪よ」

※ゆずるの筆談【】

ゆずる【黄瀬ゆずるです。よろしくお願いします】

真里「よろしくね、ゆずる」

ゆずる【あの、王牙様って、どんな方なんですか?】

真里は鼻高々に話し始める。

真里「王牙様は大あやかしである犬神のあやかしで、犬神一族のご当主。その強さは一度の攻撃で千人もの敵を討つと言われるあやかしの王です」

ゆずる(そんなにすごいあやかしなんだ……でも、どうしてあの祠の中にいたんだろう?)

ゆずる【王牙様はずっと森の祠に封印されていたんですか?】

ノートを見た真里は苦い顔をする

真里「あー……それには色々と事情があって……。って、そんなことより、まずはあなたを綺麗にしないと!」

真里はゆずるの背中を押し、お風呂場に連れていく。
お風呂から出ると、髪を整え、綺麗な着物を着ると、ゆずるはベッドに入る。
枕に顔をうずめるゆずる。

ゆずる(ふかふか布団で眠るなんて、贅沢だな。あの王牙様っていうあやかし、どうして私を助けてくれたんだろう。どうして、私の名前を知って……)

考えているうちに、ゆずるは眠りにつく。