儚き少女は気高きあやかし王に愛されます


◯東地区・森の中・ゆずるside

森に逃げ込んだゆずるは、どんどん森の奥に進んでいく。
その後を源河の手下達が追ってくる。

源河の手下1「待て小娘!!」

崖まで追い込まれるゆずる。

源河の手下2「そこまでだ小娘」

後ろに下がると崖が崩れ、ゆずるは崖の下に真っ逆さまに落ちていき、そのまま異界へ繋がる時空に飲み込まれる。
黒い煤のトンネルを通ると、格式高い和屋敷が立ち並ぶ異界に辿り着く。


◯異界(王牙の屋敷)・ゆずるside

ゆずる(ここは……一体、どこ……?)

異界の中を彷徨い歩くゆずる。

王牙「__お前、人間か」

その声にゆずるは見上げると、崖の上に王牙が座っている。
立ち上がった王牙は崖を飛び降り、ゆずるの目の前に立つ。

ゆずる(綺麗な人……)

その綺麗さに、ゆずるは見惚れる。

王牙「なぜ人間がここにいる?」

ゆずる(なぜって、いきなりここに飛ばされて……ここがどこなのかすらも分からないのに)

何も答えないゆずるに、王牙は目を細める。

王牙「……お前、言葉が話せないのか?」

王牙の言葉に、ゆずるは頷く。
そこへ、源河の手下達がやって来る。

源河の手下1「やっと見つけたぞ小娘!」
ゆずる「……!」
源河の手下2「手間をかけさせやがって」

怯えるゆずる。
王牙はゆずるを隠すように源河達の前に歩み出る。

源河の手下1「誰だ貴様」
王牙「貴様こそ誰だ。この王牙の城に勝手に入りおって」

ゆずる(王牙……どこかで聞いたことがある名前)

源河の手下1「王牙だと……?」

その名前に、運河の手下1は怪訝な顔をする。
隣にいる源河の手下2はハッとした顔をする。

源河の手下2「おい……まさかこの男……犬神一族のご当主、王牙様じゃないか」
源河の手下1「えっ……犬神って、あのあやかし最強と謳われる?」

源河の手下1と2は顔を見合わせると焦り出す。

源河の手下1と2「「し、失礼をいたしました……!!」」

先ほどの偉そうな態度とは打って変わり、地面に頭をつけ王牙にひれ伏す。

ゆずる(あやかし……?この綺麗な男の人が?)

王牙「なぜその娘を追う?」
源河の手下2「はっ、その者は、我らあやかしに楯突きました」

王牙はゆずるを一瞥する。

じっと見る王牙。
ゆずるは恐怖で体を震わしている。

王牙「……そうか。なら……始末しないとな」

王牙の言葉に、ゆずるは肩をビクッとさせる。
ひれ伏せていた源河の手下達はニヤリと笑う。
っと次の瞬間。
王牙は源河の手下1の首を掴み締め上げる。

源河の手下2「ウゲッ……!なっ、なぜですかっ……王牙様」
王牙「死ね。ゲスが」

王牙の鋭い爪で源河は切り殺される。

ゆずる(嘘……あの蛙達が、こんな簡単にやられるなんて)

王牙に恐れを慄き、手下はその場から動けなくなる。

王牙「切り殺されたくなければ立ち去ることだな」

王牙は片手の平を崖に向けると、黒い煤のトンネルを作り出す。
源河の手下1は焦りながらトンネルの中に入り、王牙の城から去っていく。

ゆずる(……どうして、助けてくれたんだろう)

王牙「どうしてなんだと、言いたそうな顔だな」
ゆずる「……!」

ゆずる(心を読まれた……??)

王牙はゆずるの膝裏に両腕を通すと持ち上げる。

ゆずる(えっ、ちょっと!)

そのまま空に飛び、恍惚と輝く月の前を通る。※そんな王牙に見惚れているゆずるの絵。

ゆずるモノ『満月の夜。私の前に現れたその美しいあやかしは、颯爽と私の心を奪った』