◇
その日の夜、ベッドに寝そべって本を読んでいた俺はスマホの画面にふっと通知が浮かんだのを視界の端に捉えてハッとした。メッセージの受信だ。開いてみると先輩からだった。
送られてくるかもしれない、とチラチラ気にしていたから、本当にメッセージが来て驚くのと嬉しいのが両方混ざる。
『みずきって、部活やってる?』
という普通の内容だった。突然な話題な気もするし、今まで本の話以外をほとんどしたことがなかったから、こういう基本的な情報は不足しているといえばそうだった。
また何かの事情で朝電車の時間がずれるかもしれないし、教え合っておくにはちょうどいい。
『やってないです。うちの高校は委員会か部活どっちか入ってればよくて、俺は図書委員なので』
そう返すと、すぐにまたシュポンと返事が来た。
『ぽいね じゃあ帰りが遅いんだ』
『はい といっても当番あるのは週に一回ないくらいですけど 先輩は部活やってるんですか?』
『やってない 一年のとき帰宅部ありって聞いて、迷わなかった』
『笑 先輩のとこ進学校ですしね』
『そう 運動部に強さがない 男はみんなモヤシ』
『どういうことですか笑 先輩もこの前の友達も普通に俺より体格よかったですけど』
先輩の方が俺よりよっぽど背も高くて身体も厚い。
俺は食べても筋肉つかないタイプなのか、中学のとき一応は運動部だったのに身体は全然大きくならなかった。
『ほんと? 中学でバスケやっててよかった』
シュポンと送られてくる返事を見て納得した。
先輩とバスケ。イメージがよすぎるし、多分上手かったんだろう。
『バスケ部ありそうですけど高校で続けなかったんですか?』
『のめり込むほど情熱なかったんだよね 誘われてノリで入ったかんじだったから』
『なるほど 俺もソフトテニスやってたんですけど同じようなかんじだったんでわかります』
俺の場合、中学に部活自体が少なくて、男は運動部に入れっていう暗黙の圧力があったから仲のいい友達となんとなくで入った。そこまで上手くなるわけでもなかったし、ほぼ外周と壁打ちしてたな。
『テニス上手いの?』
『球拾いの速さなら誰にも負けませんね』
『笑 運動部はコートの取り合いなるよね』
『そうなんです 二年までは週の半分外周してました』
『今度球拾いしてるとこ見せて』
『え? どうやってですか?』
『動画で』
『動画笑 無茶です』
部屋に一人でいるのに笑い出しそうになって枕に顔を埋める。
『ところで先輩の好物ってなんですか? 俺はこれですけど』
と、出し抜けにスタンプを送る。
朝電車の中でも送った、ひじきのキャラだ。箸休め一族というシリーズのゆるキャラで、最近俺の中だけで流行っている。
今朝は先輩の好物を聞けなかったから、ちょっと気になっていた。
先輩からは『やっぱひじき笑』と返事があった後、少し遅れて質問の答えが来た。
『食べ物なら肉かな』
『具体的な料理だとなんですか?』
『生姜焼き……?』
『疑問形笑 パンじゃないんですね』
『パン忘れて 恥ずかしいから』
『笑 結局、昨日買ったんですか?』
『買った 俺も』
『笑』
また枕に顔を埋めて笑ってしまう。
ぽちぽちと短いやり取りを続けて、気づいたら三十分経っていた。あっという間に時間が経っていて驚く。
そろそろ寝よう、と思った頃に先輩がほどよく話を切り上げてくれた。
『また明日』
『おやすみなさい』
『おやすみ』
挨拶を送り合って、なんとなく頬がじわっと熱くなった。
なんか、お休みの挨拶するのって、照れるな。黒木とは夜にやり取りしててもおやすみ、なんてわざわざ送ったりしないし。
ちょっと火照った顔を手で仰いで、スマホを枕元に戻す。
今日は全然本の話をしなかった。いつの間にか、本の話題がなくても先輩と話せるようになってる。
そう思って、ちょっと自分にびっくりした。それから、仲良くなれた気がして浮き足だったみたいに気分がいい。
明日は何を話そう。
部屋の電気を消して、もう数時間後に会う先輩のことを考えながら目を閉じたら、自然に眠りについていた。
その日の夜、ベッドに寝そべって本を読んでいた俺はスマホの画面にふっと通知が浮かんだのを視界の端に捉えてハッとした。メッセージの受信だ。開いてみると先輩からだった。
送られてくるかもしれない、とチラチラ気にしていたから、本当にメッセージが来て驚くのと嬉しいのが両方混ざる。
『みずきって、部活やってる?』
という普通の内容だった。突然な話題な気もするし、今まで本の話以外をほとんどしたことがなかったから、こういう基本的な情報は不足しているといえばそうだった。
また何かの事情で朝電車の時間がずれるかもしれないし、教え合っておくにはちょうどいい。
『やってないです。うちの高校は委員会か部活どっちか入ってればよくて、俺は図書委員なので』
そう返すと、すぐにまたシュポンと返事が来た。
『ぽいね じゃあ帰りが遅いんだ』
『はい といっても当番あるのは週に一回ないくらいですけど 先輩は部活やってるんですか?』
『やってない 一年のとき帰宅部ありって聞いて、迷わなかった』
『笑 先輩のとこ進学校ですしね』
『そう 運動部に強さがない 男はみんなモヤシ』
『どういうことですか笑 先輩もこの前の友達も普通に俺より体格よかったですけど』
先輩の方が俺よりよっぽど背も高くて身体も厚い。
俺は食べても筋肉つかないタイプなのか、中学のとき一応は運動部だったのに身体は全然大きくならなかった。
『ほんと? 中学でバスケやっててよかった』
シュポンと送られてくる返事を見て納得した。
先輩とバスケ。イメージがよすぎるし、多分上手かったんだろう。
『バスケ部ありそうですけど高校で続けなかったんですか?』
『のめり込むほど情熱なかったんだよね 誘われてノリで入ったかんじだったから』
『なるほど 俺もソフトテニスやってたんですけど同じようなかんじだったんでわかります』
俺の場合、中学に部活自体が少なくて、男は運動部に入れっていう暗黙の圧力があったから仲のいい友達となんとなくで入った。そこまで上手くなるわけでもなかったし、ほぼ外周と壁打ちしてたな。
『テニス上手いの?』
『球拾いの速さなら誰にも負けませんね』
『笑 運動部はコートの取り合いなるよね』
『そうなんです 二年までは週の半分外周してました』
『今度球拾いしてるとこ見せて』
『え? どうやってですか?』
『動画で』
『動画笑 無茶です』
部屋に一人でいるのに笑い出しそうになって枕に顔を埋める。
『ところで先輩の好物ってなんですか? 俺はこれですけど』
と、出し抜けにスタンプを送る。
朝電車の中でも送った、ひじきのキャラだ。箸休め一族というシリーズのゆるキャラで、最近俺の中だけで流行っている。
今朝は先輩の好物を聞けなかったから、ちょっと気になっていた。
先輩からは『やっぱひじき笑』と返事があった後、少し遅れて質問の答えが来た。
『食べ物なら肉かな』
『具体的な料理だとなんですか?』
『生姜焼き……?』
『疑問形笑 パンじゃないんですね』
『パン忘れて 恥ずかしいから』
『笑 結局、昨日買ったんですか?』
『買った 俺も』
『笑』
また枕に顔を埋めて笑ってしまう。
ぽちぽちと短いやり取りを続けて、気づいたら三十分経っていた。あっという間に時間が経っていて驚く。
そろそろ寝よう、と思った頃に先輩がほどよく話を切り上げてくれた。
『また明日』
『おやすみなさい』
『おやすみ』
挨拶を送り合って、なんとなく頬がじわっと熱くなった。
なんか、お休みの挨拶するのって、照れるな。黒木とは夜にやり取りしててもおやすみ、なんてわざわざ送ったりしないし。
ちょっと火照った顔を手で仰いで、スマホを枕元に戻す。
今日は全然本の話をしなかった。いつの間にか、本の話題がなくても先輩と話せるようになってる。
そう思って、ちょっと自分にびっくりした。それから、仲良くなれた気がして浮き足だったみたいに気分がいい。
明日は何を話そう。
部屋の電気を消して、もう数時間後に会う先輩のことを考えながら目を閉じたら、自然に眠りについていた。
